半兵衛

実録桐かおる にっぽん一のレスビアンの半兵衛のレビュー・感想・評価

4.0
製作当時話題となっていたレズビアンショーのスター桐かおるを取り上げたドキュメンタリースタイルのドラマ、桐かおるやその関係者たちによる生活やショーの模様を捉えた貴重な映像資料としての価値もさることながら、ストリッパーたちの生態を掘り下げる下世話な企画が藤井克彦監督の真面目な職人監督ぶりと企画協力やインタビュアーを手掛ける小沢昭一の巧みな話術により自分の性に悩む女性たちの生きざまを描いた真摯なLGBT作品に。でもこんな作品がソフト化もされず映画ファンでも話題になっていないことを考えるとやはり女性の性問題は昭和では早すぎたのか。

ショーで活躍する桐かおるパートと彼女の魅力に取りつかれて関係を結ぶも棄てられてしまった夫人によるドラマパートはいずれも性的少数者が当時は理解されていないことが描かれており、そんな彼女たちの苦しみやそうした者が生きるためには当時は風俗しか道が無いことが切実に伝わってくる。そして二つのドラマパートがラストの自分の性に忠実に進む桐かおるの勇姿で結実する演出に唸らされる。

素人とは思えない貫禄のある桐かおるの堂々とした演技に触発されたのか藤井監督のドキュメント演出の意図を組んだのかいつものロマンポルノ作品よりリアルな常連役者たちの演技も見所の一つで、特に身も心も捧げた女を別の女性にとられて心神喪失してしまう女性の渇きと苦悩を熱演する中島葵やそんな彼女との距離に静かに苦悩する浜口竜哉の繊細な演技が圧巻。そしてドキュメンタリーパートで桐の恋人役として登場し、終盤で性行為が出来ない男を痛烈に批判してその後ショーの相手役として違和感なく演技をする芹明香の存在感!

モノクロとカラーを巧みに使い分けたり、やってることは暴行なのにスタイリッシュで美しいバーでの絡み(赤い照明の使い方がカッコいい)など撮影担当の安藤庄平の映像センスも特筆に値する。

近々ラピュタ阿佐ヶ谷で続編(filmarkar未登録)が上映されるので見に行こうかな。
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