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カムイ外伝のsithmaroのレビュー・感想・評価

カムイ外伝(2009年製作の映画)
3.0
スタイリッシュな忍者映画を観たいのならば「アリ」かもしれない。
ただ白土三平の劇画の実写化作品として観ると、かなり残念と言わざるをえない。

もちろん原作付きの作品を映像化する場合、必ずしも忠実に再現すればいいというものではないことは理解している。
だからと言って原作と解離しすぎてもいけないとも考える。
脚本に関しては「まぁ、こんなもんか」という印象。
「良い」と言うわけではないが、「悪い」という印象もない。

演出面では、原作の重苦しい雰囲気を出そうと頑張っているようには見える。
ただ、それでも白土三平の絵から漂う「泥臭さ」が足りない気がする。
スタイリッシュさを求めた結果の弊害とでも言えばいいのだろうか。
CGとワイヤーを駆使したアクションシーンは見る人によっては滑稽とすら思う人も出てくるだろう。

そして何より一番ダメだと思ったのが、カムイの必殺技「変移抜刀霞斬り」の映画での映像表現。
白土三平の劇画における忍者の魅力は「実在した忍術」と錯覚させるほどのリアリティだと思っている。
しかしこの作品の『変移抜刀霞み斬り』は忍術、体術と言うよりは幻術、あるいは魔法みたいな表現になってしまった。
そしてそれをスローモーションで見せたのは完全に悪手だと感じた。

実はこうした劇画→実写映画への悪いアプローチの仕方が映画全体に漂っていることが、この作品に高い評価を与えられない最大の理由かもしれない。
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