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ネアンデルタール人の秘密のblacknessfallのレビュー・感想・評価

ネアンデルタール人の秘密(2024年製作の映画)
3.5
それまでホモ・サピエンスより野蛮で知能が低いとされていたネアンデルタール人のイメージが変わる!
と、言われてもネアンデルタール人に“それまで”の知識すらないおれから見ても新鮮な驚きを満ちたドキュメンタリーだった。

おれが小学生の頃ってネアンデルタール人は我々人類、ホモ・サピエンスの進化の過程の一種扱いだったんだよ、確か。それがどうもネアンは別系統であることが判明したってことしか知らないからな。

とにかくその野蛮で知能が低いという説が覆されていく過程の発見と研究の成果をサラッと紹介してくれる本作はおれのようなネアン初心者にはとても分かりやすく知的好奇心を刺激してくれる作品だった。

ターニングポイントとのなったのは60年代にイラクのシャニダール洞窟で数体のネアンデルタール人の遺体が発見されたこと。これを発見したソレッキ教授というのが当代一の学者。
1つの遺体の周りから大量の花粉が採掘され、これはネアンデルタール人が遺体を花で囲み死者を弔ったことを裏付ける証拠だとソレッキは発表した。
当時としてはかなり大胆な説で批判もあったものの概ね認められた。これからさらに洞窟を調査しようとした矢先、イラクはクルド人の戦争、湾岸戦争、そしてイラク戦争と政情不安続くうちソレッキは亡くなってしまう。
2010年代に政情が安定しソレッキの意志を継いだ研究者達がシャニダール洞窟に訪れる。そこでほぼ全身が残る新たな遺体、シャニダールZを発見する。この発掘調査とシャニダールZの分析でやはりネアンデルタール人はホモ・サピエンスに近い知能と情感を持った種族だと考える結果が続々と明らかになる。

この研究がおもしろい。歯についた歯石を分析して食生活を探ったり、骨の損傷から当時の生活や社会を推理する。この地道な研究から彼等も想像を超えるほど知的で情緒豊かなネアンデルタールの姿が提示される。自分も研究班の一員のように感動したよ笑
研究者達の粘り強さと推理力にも感動した。骨からいくもの噛み跡あったことから共食いをしてたと言われてたけど、よく見ると食べるだけにしては不自然な噛み跡が多いことから、これは飢えからの共食いではなく死者を自分の中で生かす儀式的な食人行為だったと結論づける。
こんなの高い専門的知見と粘り強さがないとわからないよ。
そして、フランスのネアンデルタール人の洞窟から人工的に配置されたストーンヘンジのような構造物が発見され、その知能の高さが証明される。
そんな感じで近年飛躍的に色々解明されているネアンデルタール人たが、最大の謎が1つ残った。
三十万年から栄えた彼等は四万年前に忽然と姿を消した。この理由がわからない。

おれはこれを見て思い出したんだ。我々ホモ・サピエンスが出現してから数種類居た別系統の人類が悉く絶滅している。現在、ホモ・サピエンスしかいないのは我々の祖先が別系統を虐殺した可能性があるって学説を。
本作でもホモ・サピエンスとネアンデルタール人の遭遇はあった。悪い遭遇もあったが良い遭遇もあったはずたと言ってて、暗にホモ・サピエンス虐殺を匂わせている。しかし、我々にもわずかにネアンデルタール人のD.N.Aがある。従兄弟のような関係だったと思うという学者の言葉できれいに終わらせてる。
でもねぇ、絶対ホモ・サピエンスの仕業だよ、何せ子孫である我々の歴史は同族での凄惨な殺し合いじゃないか。我々の排他性と凶暴性を鑑みればネアンデルタール人消滅の真相は明らかじゃない?
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