けーはち

シャイニングのけーはちのレビュー・感想・評価

シャイニング(1980年製作の映画)
3.7
・前半は環境映像
・後半はジャック・ニコルソンを観る映画

クラシック・ホラーで正直今の感覚で言うとモッサリした展開だけど映像美とジャックの顔芸は凄い。

10月から翌5月まで半年閉鎖する(経営は大丈夫とか余計なことを考えてしまう)ホテルの管理人に雇われた作家志望の男とその家族が、豪雪の中で奇妙な目に遭う。巨匠キューブリックのホラー映画。

景色とホテルの造形美🏨素晴らしい。こんなホテルに半年住み込みで生活できるなんて羨ましい。そう思わせるに足る環境映像を序盤は沢山見せつけてくる。

ところがシャイニング能力により突如見える幽霊姉妹や赤い血の流れるヴィジョン、あるいは幽霊と化したホテル従業員などが現れてくると、その奇妙で幻想的な世界に心をざわめかせてしまう。

轟音や衝撃的映像でウワーッと驚愕させる作品ではない。豪雪に包まれたホテルという閉鎖空間の中、抑制的かつ丹念に静かに非現実的映像と音楽の演出でじわじわ不安を煽る。

もっとも、パッケージを見れば分かる通り、ジャック・ニコルソンの狂気の怪演、顔芸が本作のホラー性の大部分を担っているわけである。

ホテル従業員たちの霊に憑かれ、ジャック・ニコルソンは“しつけ”として家族に対し次第に攻撃的になる。ところが所詮しがない元教師、物書きワナビーの中年小男。丸腰状態なら相対してもそれほどの脅威はなく妻にバットで殴られ階段を転げ落ちたりする。

しかし終盤は霊に後押しされ、斧を手にマジで殺すモードになる。喜怒哀楽がグチャグチャとした形相で追いかけてくる辺りは奇怪である種生々しい。

妻を演じるシェリー・デュヴァルも滅茶苦茶怖い。痩せぎすで目がぱっちりしていて常に何かに怯えている表情がじわじわ不安を掻き立てて来る。誘い笑いならぬ誘い怯え。ホラーの絶叫クイーンはかくあるべし。