シートン

シャイニングのシートンのレビュー・感想・評価

シャイニング(1980年製作の映画)
2.8
原作を読んでいないが、この作品を見ただけで、原作小説の書き手が激怒するに違いないということは理解できる。小説の世界をなすモチーフだけを取り出し、それを好き勝手にバラしたりくっ付けたりして戯れているだけであるように感じられてしまう。けっきょく、「シャイニング」とは、何だったのか? そのような追究はなく、示唆すらない。

キューブリックの美的なこだわりと俳優に対する専制的な演出が、作品のなかの構成的でありながら狂気的な美をうんでいるが、それだけに主題の空虚さが一層浮き彫りになっている。

ゆえに、演技ではなく、真に心理的に圧迫されつくした人間(俳優)の悪夢を見る史料としてこの映画には一級品の価値があるが、それだけだ。この作品は西洋建築とトラウマ症例のカタログとしての価値しかない。
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