kkkのk太郎

スノーホワイト エクステンデット・エディションのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

2.2

このレビューはネタバレを含みます

世界中で愛されるグリム童話「白雪姫」を、新たな視点から描きなおしたファンタジー・アドベンチャー映画『スノーホワイト』シリーズの第1作。

王の後妻という立場を利用して王国を乗っ取った邪悪な魔女ラヴェンナ。魔女は永遠の命と若さを手に入れるため継娘である王女スノーホワイトを手に掛けようとするのだが、逃亡を許してしまう。魔女の魔力が及ばぬ”黒き森”に逃げ込んだスノーホワイトを追うため、一匹狼の猟師エリックが遣わせられるのだが…。

世界一の美貌を持つ王女、スノーホワイトを演じるのは『イントゥ・ザ・ワイルド』『トワイライト』シリーズの、名優クリステン・スチュワート。
王国を支配する邪悪な魔女、ラヴェンナを演じるのは『ミニミニ大作戦』『ハンコック』の、オスカー女優シャーリーズ・セロン。
スノーホワイトを追う猟師、エリックを演じるのは「MCU」シリーズや『キャビン』の、名優クリス・ヘムズワース,AM。
スノーホワイトの幼なじみである公爵家の嫡男、ウィリアムを演じるのは『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉』のサム・クラフリン。
スノーホワイトに力を貸すドワーフたちの1人、ニオンを演じるのは「スリー・フレーバー・コルネット」シリーズや『宇宙人ポール』のニック・フロスト。

「GeminiよGemini。世界で一番美しいのはだ〜れ?」と、Googleの対話型AI”Gemini”に聞いてみたところ、「それはジャスミン・トークスです」という答えが返ってきた。
ジャスミン・トークス…。知らん人だなどれどれ…。と調べてみると、いやこりゃ確かに凄い。スタイルが良すぎてCGにしか見えん!というわけで、今頃魔女は彼女の下に毒リンゴを届けに行っていることだろう。ジャスミンさん、それ食べちゃダメダメよ〜。

クッソどうでも良い小咄から初めてしまったこのレビューですが、ここからはちゃんと書きます。
今更説明する必要もない、世界で最も有名な童話の一つ「白雪姫」。あのネクロフィリア(死体愛好)のヤバいお話ですはい。
本作はそれを大胆にアレンジ。白雪姫を復讐に燃える闘うお姫様として描きなおすことで、恋物語ではなく貴種流離譚としてこのメルヘンを生まれ変わらせました。
また、原題が『Snow White & the Huntsman』であることからも分かる通り、この映画のもう1人の主役は猟師。原作ではチョイ役である彼をフィーチャーすることで、保守的なシンデレラストーリーからの脱却を試みていることも本作の特色の一つであると言えるでしょう。

着眼点は面白い。…のだが、いかんせん似たようなことをディズニーがすでにやってしまっている。『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)じゃんこれ。
俺たちも『アリス』みたいなの作って大儲けしようぜ!という下心が見え見えで、企画から全然熱意が伝わってこない。
画作りにしてもなんか意欲が無いというか、『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)をそのまま抜き出したかのような画面が続く。しかも展開も『LotR』そのもの。小人が8人いる時点で、そうなることは何となく読めたぞ…。

驚いたのは『もののけ姫』(1997)を丸パクリするという大胆な手法によって描かれた”妖精の森”。そしてそこに棲む妖精のキモさ。歴代キモい妖精ランキングのトップに食い込むであろう衝撃のビジュアルに度肝を抜かれてしまった。もしかしたらこの見た目も『もののけ姫』の木霊オマージュだったのかも。それにしたってもう少し愛嬌っつーもんがあってもよいと思うが…。
鳥の身体からヌルッと抜け出すところなんかほぼホラー。動物を憑代にして外界をウロウロするっていう発想はちょっと面白いけどね。
余談だが、監督ルパート・サンダースの次回作は『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)。今回の『もののけ姫』パクリといい、この人ってもしかしてアニメオタクなのか?

『ジャンヌ・ダルク・イン・もののけの森 旅の仲間』みたいな、とにかく既存の映画のパッチワークのような作品である。中世ヨーロッパ風のセットや衣装は美しいし、黒曜石の悪霊や魔法の鏡などといったVFXのクオリティも非常に高い。視覚的には楽しめる点もある。

ただ、物語はとにかくつまらない…😅よくぞここまでつまらなく出来たもんだと逆に感心してしまうほどにつまらない。
ご都合主義的な展開にはまぁ御伽話だし目を瞑るとしても、時間配分のおかしさは擁護の仕様がない。
本作は白雪姫の復讐譚。強力な魔力で王国を支配する邪悪な魔女にどう立ち向かうのか、見せるべきはそこだと思うのだが、本作で描かれるのは緊張感があるんだかないんだかよくわからない白雪姫と猟師の逃走劇。ところどころでイベントは発生するものの、基本的には辛気臭い物語が一定のテンションでダラっと続く。マラソン大会でもしてんのか?

中盤を過ぎたあたりでようやく王子や7人の小人といったお馴染みのキャラクターと合流するのだが、大した掘り下げも活躍もないので本当にただ出てきただけって感じがする。顔見世興行みたいなもん。
小人の1人が『LotR』のボロミアっぽい最期を遂げるわけだが、さっき会ったばっかりの人に死なれてもねぇ。感動的な場面のはずなのに何の感傷も湧いてこない。

映画スタートから1時間半が経過してもなお、レジスタンスを率いる公爵の下に到着しない白雪姫一行。あぁこれはあれか。とりあえずこの第1作では白雪姫の復活までを描いて、魔女との対決は2作目以降に持ち越しのパターンね。…なんて思っていたら!
まさか30分あまりで王国奪還までを描き切るとは。来た、見た、勝った。…うーん打ち切りマンガ並みのスピード感。
特に何のロジックもなく、一領主が王国軍に勝利してしまった。強大な敵をどう倒すのか、その筋道を組み立てるところが戦記映画の面白いところだと思っていたのだがそういうのはどうでも良いらしい。うーん…。

思うに、この監督はファンタジー以外の要素は出来るだけ実写で撮りたい人なんだろう。爆発や格闘、騎馬戦などのアクションシーンにはかなりの拘りを感じさせる。
それは分かるのだが、そこを追求しようとするあまり全体的にとってもこじんまりとした映画になってしまっている。
白雪姫追跡隊が6〜7人しかいなくてなんか迫力ねぇなぁとか思っていたのだが、それはクライマックスでも同じ。一国を落とすという大戦争のはずなのに、100人vs100人くらいの小競り合いにしかみえない。『王の帰還』(2003)観てないのかオイっ!?
そこはCGを豪快に使ってでもゴージャスな大戦争を描くべきだったのではなかろうか。ラストバトルが超しょっぱいので、全然強敵に勝ったという爽快感がない。

ミルク風呂に浸かったりオイル塗れになったり、白くなったり黒くなったりで忙しいシャーリーズ・セロン様。彼女の堂々とした悪女っぷりはなかなか見応えがある。
まだソーのイメージが定着する前のクリヘムも奮闘していた。やっぱりこの人華がある。登場するだけで画面がゴージャスになるよね。
ただ、問題は主演のクリステン・スチュワート…。この人って常に口が半開きじゃないっすか?そこが気になって気になって…。
世界一の美女である白雪姫。美しさの基準って主観でしか無いわけだから、そもそも「白雪姫」の物語って成立しないよね、とか思ったりもする訳だがまぁそこに突っ込んでも仕方ないのでそれは置いとくとして。
どうしてもスチュワートがセロン様よりも美しいとは思えないというか…。はっきり言ってセロン様って普通じゃないじゃないですか。人間としてというより生物としての迫力がすごい。クマとか素手で殺せそう。
そんな人間が魔女を演じているんだから、魔法の鏡が「あなたよりも白雪姫の方が美しい」とか言ってても、「えっそうかなぁ?」なんて観客は思っちゃう。キャスティングミスとまでは言わないが、なんか物語に説得力がないんですよね。じゃあセロン様より美しい女優って誰なんだと言われると答えに窮してしまうが…。

ハイクオリティなVFX、美しい衣装、セロンとクリヘムなど、視覚的な見どころはあるが物語はスカスカでへっぽこ。何のために作ったのかよくわからない映画でありました。
本作だけで完全に完結している訳だが、ここからどうやって続編を作るだろう?そこだけは気になってしまう。

本作の監督ルパート・サンダースと、白雪姫の母親を演じたリバティー・ロス(音楽家アッティカス・ロスの妹さん)は夫婦。…しかしこの撮影がきっかけでサンダースとスチュワートは不倫関係に。それが露見し、結局サンダースとロスは離婚する事になってしまった。
純真に見える白雪姫こそ実は恐ろしい。スケベ心は身を滅ぼす。そんな現代の童話がこの撮影裏にはあったのです。

※この『エクステンデッド・エディション』は劇場公開版よりも3分ほど長くなっている。劇場公開版をちゃんと観た訳ではないのでこの両バージョンの違いは判然としないが、少なくとも王国乗っ取りの際の魔女の描写や、猟師と王子のやりとりなどは追加されている。
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