こたつむり

暗闇にベルが鳴るのこたつむりのレビュー・感想・評価

暗闇にベルが鳴る(1974年製作の映画)
3.7
♪ テレフォン・ライン
  つなげておくれ この想いを
  彼女の胸まで近くて遠い 心が痛い

クリスマスはキリスト教最大の発明。
…なんて話を聞いたことがあります。
確かにバタバタと忙しい季節ですが、家族や恋人と心温まるひと時を過ごして英気を養うには良いタイミング。キリスト教徒が少ない日本でも定着するのも当然ですね。

しかし。
世の中にはそれを“呪う”人たちもいるわけで。
漆黒の水面を見つめながら口にする呪詛は、深く、深く、ひたすらに深く。ごうごうと唸りながら暴虐を呼び覚ますのです。そして、それが積み重なれば…本作のような物語になるのでしょう。

華やかなクリスマスの時期。
喧騒の中に鳴り響くベル。
受話器の向こう側から聴こえるのは“不穏”。
ひたりひたりと忍び寄る恐怖…。ギャーッ。

いやぁ。怖いですねえ。凍り付きますねえ。
粒子の粗い映像が想像力を刺激し、闇の向こう側に“何か”が浮かび上がってくるのですよ。デジタル全盛期の昨今ですが、やはりホラーはアナログに限りますね。ギャーッ。

また、恐怖は理性を超越するのです。
パズルのピースをひとつずつ試す行為を嘲笑うかのように、無情は死を招くのです。そして、気付けば澱んだ瞳が窓の外を眺めるだけ。そう。それは哀れな肉塊。何処にも行くことが出来ないのです。ギャーッ。

まあ、そんなわけで。
最初から最後まで湿っている物語。
製作された1974年という時代を考えれば、ゴロリと転がる鈍器のような仕上がりも納得でした。何しろ、70年代は狂気が支配した時代。圧倒的な暴力に震える子羊が逃げる先は…やはり暴力だったのでしょう。

ギャーッ。
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