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僕たちは天使じゃないのnetfilmsのレビュー・感想・評価

僕たちは天使じゃない(1988年製作の映画)
3.8
 ファイ(レイモンド・ウォン)、ロン(チョウ・ユンファ)、サン(ジャッキー・チュン)の3人がレイモンド・ウォンを長兄とする3兄弟だということがまずもって信じられない 笑。顔・形も違えば、骨格も背格好もまるで似ていない。チョウ・ユンファが次男でジャッキー・チュンが三男だということも半ば冗談かと思うが、正月映画だから許された豪華出演陣である。その中でも特に凄いのは、冒頭からおカマの演技をかますチョウ・ユンファが、実は3兄弟一番の女ったらしであり、プレイボーイだということ。化粧の肌の乗りを気にし、風呂場でスキン・ケアする様子は『男たちの挽歌』で一世を風靡した男と同一人物とは思えないまさかの怪演ぶりである。ジャッキー・チュンも明らかにゼメキス『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックスばりのローラー・スケートで街を闊歩する。

 チョウ・ユンファとジャッキー・チュンというイケメン俳優の陰に隠れ、レイモンド・ウォンが損な役回りを一手に引き受ける当たり役を演じている。弟2人が、当時の美女スターだったドゥドゥ・チェンやファニー・ユンを次々とモノにする中、悪戯電話の些細な行き違いから、好きだった女にいとも簡単に振られてしまう。そこで恋のキューピット役を買って出るのは、フォンの息子ではなく、兄のことを思う弟2人なのである。クライマックスの広東オペラの場面は問答無用に素晴らしい。まったく京劇の経験がなかったレイモンド・ウォン扮するファイが、母親の代役で急遽舞台に上がるという設定だけでも笑えるが、途中から兄弟たちまでもが舞台に上がり、真にとち狂った演技合戦を披露する。ラスト・シーンの客席にあの人が一瞬だけ座っているのは、正月映画だから許された光景だろう。ただのコメディにも関わらず、はからずも90年代後半に突如開花したジョニー・トーの香港ノワールに至る端緒のようなものが、あの場面にはしっかりと滲んでいる。
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