TaiRa

センチメンタル・アドベンチャーのTaiRaのレビュー・感想・評価

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「イーストウッドと少年」の最初かな。イーストウッド遺作シリーズもここくらいから始まってる。

酔いどれカントリー歌手と甥っ子のロードムービー。人気音楽番組のオーディションを受ける為にナッシュビルへ車を走らせる。道中に牧歌的なエピソードが入り込む珍道中。鶏泥棒がバレて警察に捕まった叔父をその他大勢の囚人もろとも脱獄させるとか、牧場の風呂に勝手に入ってたら闘牛に襲われるとか、甥っ子が売春宿で一目惚れした娼婦と童貞喪失するとか、ちょっとした話が並ぶ。甥と不良な叔父との、大人になるまでの通過儀礼的な旅路。親元を離れ、悪い事も教わりながら生き方を学ぶ。真っ当な「アメリカ映画」だなと。イーストウッドのモデルは、「カントリー音楽の父」ジミー・ロジャーズ。結核を患い早逝した偉大なミュージシャン。クライマックスで描かれる命を削ったレコーディング風景も彼の最期のレコーディングを参照している。ロジャーズは、レコードが売れてスターになったミュージシャンの最初期でもあるので、そういう点を踏まえると、死後にラジオからあの曲が流れるラストも味わい深い。イーストウッドが抱く死の尊厳はキャリアを通じて描かれるし、この頃から今に至るまで、子供世代への継承を描き続けてるのも凄みがある。持ち主が死ぬと車も死ぬのは流石。印象的な役を演じたアレクサ・ケニンがこの数年後に若くして亡くなったと知って悲しい。
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