垂直落下式サミング

新座頭市 破れ!唐人剣の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

新座頭市 破れ!唐人剣(1971年製作の映画)
4.0
中国大陸から日本にやって来た片腕必殺剣の若者が、侍たちに無礼討ちされそうだった唐人の子供を助けて、道すがら偶然一緒になった座頭市と行動をともにするが、ある誤解が生じて対立してしまう。
日中二大スター共演、両作品の世界観を共有しており『座頭市』の第22作目かつ『片腕必殺剣』第3作目とされる。
香港の実力派ジミー・ウォングが共演を快諾。ハンディキャップを持った身体障害者ヒーロー同士であるという点で、いずれはぶつかるべき必然的な対決。二大オリエンタルソードマンの激突ということもあり、海外アニキたちにも人気のある作品だ。
ストーリーは、両シリーズをリスペクトするあまり、いつも以上に御都合主義が目立つ作りとなっているが、両者が対立に至るまでキチンと段階を踏まえているし、わざわざ海の向こうから来てくれた人に、敬意を払いすぎることに越したことはない。
今回の座頭市は、交渉に応じないやくざの親分の耳を切断するなど、狂暴さに拍車がかかっている。数年後のテレビシリーズ化を前に、このあたりから徐々に徐々に暴力の化身となりつつあり、居合いだけではないグーパンも炸裂。
ジミー・ウォングも負けじと大陸の武術で侍たちをバタバタと倒していくが、香港仕込みの飛んで跳ねては、日本的な時代劇の撮り方だと、どうにも安っぽくなってしまう。ゴールデンハーベストやショーブラザーズのようなアクションを日本が撮ると、どうしても仮面ライダーっぽい絵面になって、それを生身の人間がやるとより間抜けに見える。
ふたりともにヒロインがいるが、片腕は少年漫画のような健全な関係なのに対して、座頭市は夜這いの関係。ここで、てんぷくトリオをおならで撃退する。
最終決戦でジミー氏が「ヅァトウィチー!」と叫ぶのだけど、座頭市は中国語だと「ザトウシー」っていう発音な気がするし(正確かどうかは知らない)、よくよく考えれば「市(いち)」は訓読みなので、けっこう日本語に寄せてくれている感じ。やさしい。
香港版のラストでは勝敗が違っているのだけど、そっちは同じ映画なのかってくらいショボくなっている。僕がみたのが正式なフィルムなのかはわからないし、どちらも最終的に両者絶命には至っていないという事で、ふたつの結末をみた上で、夢を壊さないよう受け手側で損託することとしたい。
座頭市あるある。樽のなかに入りがち。今回のは『鉄火旅』のよりもでかい。樽インフレ。