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蜘蛛女のキスのHKのレビュー・感想・評価

蜘蛛女のキス(1985年製作の映画)
4.5
ウィリアム・ハートは40年くらい前に『白いドレスの女』や『アルタード・ステーツ』を観たのが最初。『再会の時』『ブロードキャスト・ニュース』あたりも公開時に観ています。
でも本作は公開中のTV-CFまで覚えているのにナゼか今までスルーしており、この度の訃報に接して遅ればせながらの初見です。

舞台は南米の刑務所。ゲイのモリーナと政治犯のバレンティンという獄中の二人のやりとりが舞台劇のように展開し、途中から物語は意外な方向に・・・
オープニングから既に一級品の雰囲気が漂い、一気に最後まで見入ってしまいました。
久々に、やっぱり傑作と名高い作品はちゃんと観とかなきゃな~、と思わされた作品です。
名作でも好みでない作品はいくつもありますが、本作は私的にも大当たりでした。

原作はアルゼンチンのベストセラー小説で、映画はアメリカとブラジルの合作です。
アカデミー賞では主要4部門にノミネートされ、ウィリアム・ハートはアカデミー主演男優賞の他、カンヌでも男優賞を受賞しています。
ハートは最近では脇役ばかりでしたから、久々に全盛期の活躍を見た思いです。

そして、もう一人の主役ラウル・ジュリア(本作でゴールデン・グローブ主演男優賞ノミネート)がこれまたイイ。
ジュリアも若くして亡くなりましたが、本作では二人の亡き名優の競演が堪能できます。
どちらも亡くなるにはまだまだ早い年齢でした。

ところで、エンド・クレジットでスペシャルサンクスとしてバート・ランカスターの名があったので調べてみると、モリーナ役は当初ランカスターの予定で話が進んでいたとか。
病気のため降板してハートになったそうですが、ランカスターは当時70歳を越えてましたから、モリーナを演じていたらかなり違う印象の作品になったでしょう。

また、「蜘蛛女のキス」はこの映画化の後にミュージカル化もされてブロードウェイでヒットしていますが、原作や映画ではモリーナが語る物語に登場する“蜘蛛女”がミュージカル版では主人公なんだそうです。
HK

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