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女囚さそり 第41雑居房のMASHのレビュー・感想・評価

女囚さそり 第41雑居房(1972年製作の映画)
4.5
『女囚さそり』を知らなかったとして、題名だけを聞いてどんな映画だと思うだろうか。女性のヌードシーンや暴力描写などを楽しむ、言ってしまえば下世話な映画かと思うかもしれない。だが、この『女囚さそり 第41雑居房』はむしろ逆。そういった女性たちの怒りがテーマとなった、現代でも通じるような力強いテーマを持った作品なのだ。

前作はアバンギャルドとでも言うべき描写が多かったが、今作では更にパワーアップしつつ作品に馴染んでいるように思える。何より凄いのが、単に面白いからという理由で極端な撮り方をしているわけではなく、それが女囚たちの世間に対する、強いては平気で女性に暴力を振るうような男たちへの強い怒りや憎しみを常に表しているところだ。言葉で説明するだけではなく、急に舞台のような見せ方をしたり、怪談のような悪夢のような描き方をしたり、時には吟じてみたり。とにかくストーリーと結びついて強い印象を残すものばかりだ。

そういった視覚的なインパクトもそうだが、感情的なインパクトもこの映画は強い。前作以上に悲惨な描写がかなり多い。単に血が出るとかそういうのではなく、この映画で女囚たちが男たちから受ける仕打ちというのは見るのがしんどくなるほど。だが、それらの復讐を自らの手で行おうとするさそりたちの姿は、エンタメ以上のものを感じられる。

時代を考えると、この映画はどれだけ先進的な映画だったのだろう。セクハラの域を超え性犯罪に手を染めるような奴がゴロゴロと出てきて、女囚たちが怒りや憎しみを持って復讐に出る。だが、怒りに任せて人を殺してきた囚人たちに幸せが訪れることはない。脱走という名の旅路を描く本作では、その囚人たちへの感情移入が観客に強烈な体験を与えている。ラストの道路を駆けていく何十人もの女囚たちの姿は、暴力や権力に屈することなく立ち向かう女性たちの姿とも捉えることができる。今でこそもう一度観られるべき作品ではないだろうか。
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