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ベアトリックスのKnightofOdessaのレビュー・感想・評価

ベアトリックス(2021年製作の映画)
3.5
タイトルにもなっているベアトリクスという女性が主人公となる。彼女は友人の家に独りで暮らしており、映画ではひたすら彼女の日常風景が並べられている。庭でバランスボールに乗ってごろごろしたり、オーブンを掃除したり、ベッドで寝転がってスマホを触ったり、着る服をあれやこれやと悩んでみたり、友人夫婦をもてなしたり、風呂に入ったり、猫に餌をあげたり…始まりも終わりも提示されないこれらの時間はありふれたものとして、何の説明もされないまま積み上がっていく。それによって強調されるのはスタンダードサイズに閉じ込められた、或いはそこに入り込むベアトリクスの身体であり、その動きであり、或いは壁のシミであり、机の角であり、萎びたサラダであり、濡れた足跡である。一人の人間を構成する身体と空間を記録することで、人間という小宇宙の神秘に迫った作品と言えるのかもしれない。
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