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昭和残侠伝 吼えろ唐獅子のmhのレビュー・感想・評価

昭和残侠伝 吼えろ唐獅子(1971年製作の映画)
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新たに鶴田浩二が投入されたシリーズ第八弾。
鶴田浩二が看板スターの健さんの下に割って入ってきたため池部良の扱いが少し悪くなったのだけど、それがかえって効果的に働いているように思った。そもそも「昭和残侠伝」はベタな任侠ものを正々堂々とやるためのシリーズなので、こうした有機的な変化は悪くない。
脇役でこそ輝く松方弘樹、日活から松原智恵子も参加して、展開はいつも通りでも絵面は新鮮。前作には及ばないものの、かなり面白い。
渡世人のマナー講座がよかった。作法にかなったおかわりのやり方(飯はほとんど残ったまま、たまごポケットみたいなくぼみを作って、茶碗を渡す)、お魚の食べ方(骨や皮は懐紙にまとめて懐へ)、賭場への参加方法(半なら待ちで、丁の目が出たときに入る)など興味深い。
マナー講座の続きは四年後に公開される「日本任侠道 激突篇」をお楽しみにって感じだろうか。
半裸のメタボ中年(鶴田浩二)が鞭打たれるという、そういうひとむけのサービスシーンもある。
鶴田浩二は醜態さらしてまで脇役に回って偉い。高倉健はそれをやらずに勝ち逃げしたので余計そう思う。
難点を挙げるとすれば、時代設定がいつか分からないところ。
舞台セットは完全に時代劇で使っているもの。衣装も着物がほとんどでタイトルにある「昭和」があやしく思えてくる。昭和初期の建築・風俗を完全再現していた大映のやくざもの「悪名」とはえらい違いだった。
東映やくざ映画は、役者の魅力だけが突出してていて、こうした美術とか風俗考証がおざなりになってる。本気出せば加藤泰「昭和おんな博徒」見たいに舞台セットや小道具に力入れたものも作れるのにもったいない。
鶴田浩二の登場がテコ入れみたいになってて、盛り上がるのも事実なんだけど、なんだかんだいって、やっぱり池部良がかっこよくないとこのシリーズの醍醐味は味わえないということを再確認した回だった。
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