荒野の狼

ワーテルローの荒野の狼のレビュー・感想・評価

ワーテルロー(1969年製作の映画)
4.0
ナポレオンが皇帝の座を追われエルバ島に流されるところから映画は始まるが、映画のほとんどはワーテルローの戦い。前後の話は付け足しなので、歴史全体を把握したいという人には向かない。約2時間で一つの戦闘のはじまりから終わりまでが描かれているのだが飽きさせない。南北戦争などの戦争もののファンには細かい攻防が描かれているので薦めたい。歴史的にもほぼ忠実ということだが、異なる部分は英語版のWikipediaなどに詳しい。ナポレオンのことを知らなくても当時の戦争というものがどういったものであったかは実感できるが、物語の進行の把握は困難だろう。映画の製作にはソビエト軍が全面的に協力し、巨額の製作費をかけて作られた。戦闘はCGなどを使っていないのでリアル。ただ、実際の戦闘で頻繁に起こった手足の切断などは描写はなく、言葉で表現されるにとどまるので戦争の悲惨さは伝わるが残酷描写はないので小学生からの鑑賞でも問題はない。大砲の発射される中、整然と行進する兵隊、楽隊、騎兵隊の姿は戦争において、いかに人命が軽く扱われ、それに兵隊が従順に従っていったのかが描かれており、従軍経験のない視聴者にとっては目を疑うような場面が続く。「一面識もない人間が何故殺し合うのか」と兵隊のひとりが戦闘中に叫ぶが、一方の戦争の指揮にあたるイギリス軍を指揮するウェリントンは、側近の死と戦後の犠牲の多さを身をもって感じてはじめて戦争は勝者にも敗者にも悲惨をもたらすことを実感する。現代の戦争では、そうしたことを実感することのないものが戦争の指揮にあたり、こうした反省が生まれないだけに、本作のような映画のメッセージは貴重。
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