炭酸煎餅

太平洋奇跡の作戦 キスカの炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

太平洋奇跡の作戦 キスカ(1965年製作の映画)
4.7
面白かった……!

太平洋戦争中に実施された、「奇跡の作戦」として知られるキスカ島からの撤退作戦を題材にした戦争映画。1965年の作品ながらモノクロ作品ですが、これは別に戦争映画だからという事ではなく、特撮合成技術の都合からだそうです。

1943年(昭和18年)、アラスカはアリューシャン列島・キスカ島。近隣のアッツ島が陥落してキスカ島守備隊5200名は完全孤立し、もはや米軍上陸からの守備隊全滅は時間の問題という状況になってしまった。軍上層部としてはキスカに既に戦略上意味はなく、当初戦力や資源の都合から玉砕止むなしという姿勢だったが、第五艦隊司令・川島中将(山村聡)の「このままキスカまでもを無為に全滅させては後世までの恥」という主張により、極力戦闘を避けて敵の隙きを突き、隠密に部隊を撤収させる作戦の実施が決定される。
川島が作戦司令として呼び寄せたのは、旧知の間柄である大村少将(三船敏郎)。大村は海軍兵学校を「ドンケツで出た」と自ら笑い、事実戦果も少ないと周囲から不安視される人物だったが、川島は「今回の作戦はむしろ戦果を上げたがる人物には向いていない」と語り、「大村は昔からここぞという時には"勝つ"男だ」と人選に自信を示す。かくして、キスカの将兵の運命はこの変わり種の司令官に託されることとなった……。

題材が隠密撤退作戦で、さらに成功した作戦であるためにいわゆる戦争映画「っぽい」シーンは少ないのですが、隠密行動のため、すぐ前を行く僚艦すら探照灯の光しか見えないような濃霧の中での操艦、ちょっとした事でいつ現れるか分からない敵、にもかかわらず自然現象故にいつ何時「晴れない」とは言えない霧、そんな中で無事島までたどり着き、可能な限り短時間で【絶対に】部隊を脱出させなければならない、という緊迫感・緊張感は凄まじく、発生する様々な障害や、艦隊を待つ島側の希望と落胆の描写も合わせて、この超高難易度作戦を成功させるべく様々に力を尽くす姿は非常に見応えがありました。

「……帰れば、また来る事ができる」

人物名や作戦名が実在のものとは変えられていて、あくまで「史実を元に脚色したフィクション」という体裁ではあるのですが、事実情報とも合わせてもまた深く味わえる、良作だったと思います。おすすめ。
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