佐藤克巳

兄とその妹の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

兄とその妹(1939年製作の映画)
5.0
小津安二郎と共に日本映画を牽引してきた島津保次郎監督が、これを最後に松竹を去る置き土産としては、余りにも偉大な作品を残し彼の代表作とした。真っ正直で武骨な生き様しか出来ない兄佐分利信と、才色兼備で兄想いの妹桑野通子、夫を献身的に支え慕う妻三宅邦子の三人家族の愛情物語に影が差す。佐分利は、重役との囲碁が高じて同僚河村黎吉の策謀により昇進の辞令を受けながら辞表を叩きつけ、友人笠智衆の勧めで大陸に立つ。その飛行機に妻と共に、重役からの縁談を断った桑野も同乗。こんな日本男児見た事あると思ったら私の父だった。また、桑野のハイセンスなOL姿は他の追随を許さぬ輝きを放ったが、島津監督共々戦後直ぐに亡くなる悲運が伴い幻の女優と化した。
佐藤克巳

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