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けものがれ、俺らの猿とのmeのレビュー・感想・評価

けものがれ、俺らの猿と(2000年製作の映画)
4.2
そもそも、映画やサブカルチャーに興味を持つきっかけとなったのがこの作品で、
わたしの人生は狂わされたと言っても過言ではない。

まだ中学生の頃、たまたま見た新聞のテレビ欄には深夜帯に「映画『けものがれ』」(タイトルが長いから短縮されていた)、「永瀬正敏」と2行書かれていた。ドラマは度々観るけれど、映画を観ない家庭で育ったので普段映画を目当てにする生活では無かったが、何故かタイトルと永瀬正敏が主演という情報だけで録画予約をした。

この映画を観終えた後、本当に頭に浮かんだ言葉は
「意味わかんねえ〜」だった。

だけどかっこいい。なんかキモいけど、シュールで笑える。流れる映像や音楽は、テレビ番組では観たことないものだった。
この頃、インディーズバンドにもちょうど興味を持っていた頃だったので、自分が抱えた世界観と少しずれつつも噛み合った作品だと感じた。
鮮烈に記憶に焼きついた映像、脈絡のない展開、歪んだ音楽を体験したくて繰り返し録画したVHSを再生していた。

同級生に才女がいた。およそ同じクラスになるし、家も近かったから長い付き合いの友人だ。彼女はわたしに哲学についてを教えてくれたし、ケラリーノ・サンドロヴィッチの舞台も教えてくれた。
その子にこの作品のことを話し、VHSを貸した。後日、学校で返してもらって、おおよそ彼女は肯定的に捉えた感想を話してくれた。
クラスのカースト上位の女の子が「なんの話をしてるの?」と尋ねてきたので、映画について簡単に紹介した。この女の子とはお笑いの趣味が合っていたので、度々話す子だった。
自分も見たいと言ったので、VHSを貸した。
翌週ごろ、VHSを持って彼女が現れた。
「映画どうだった?」と尋ねたところ
「なんてもん観てんの?!」
と強めの口調で言われ、VHSを突き返され、彼女は去っていった。

しかし、この言葉に呆然としつつも、納得する自分もいたのも確かだ。
だって意味わかんないもんな。

こうして月日は流れて、わたしも様々な映画を観るようになっていた。
この作品に関しては、やはり記憶にこびりついたままだった。10代のうちに何度もVHSを再生した。飽きたから観なくなり、でもまた数年経つと観たくなる。
後にVHSは処分してしまったが、20代の頃に久しぶりに観たくなってDVDを借りて観た。
何度見ても何度見ても、「意味わかんねえ〜」は変わらずだった。

2023年、本当に10年ぶりくらいだろうか、久しぶりの鑑賞。
今回はパートナーと一緒に見た。パートナーは初見だった。
今観ると、役者のラインナップが実は豪華だし、現在大活躍されている俳優さんも出てることも楽しめた。あの頃解釈出来なかったセリフや設定について新しい視点を得た。
夢遊感のある展開や差し込まれるイメージ、それからやはり楽曲。当時好きだったものは今触れてもやっぱり好きだし、かっこいい。

現実なのか非現実なのかもわからない境の中、混乱した精神状態で焼きそばを焼き、ソースをぶち撒けながら終わるあのラスト。終映。

パートナーが口を開いた。
「意味わかんね〜」
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