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港のマリィのpikaのレビュー・感想・評価

港のマリィ(1949年製作の映画)
3.5
白髪だらけの老境に差し掛かった男と大人の階段を登り始めた女の人生の対比が面白くて、「誰も彼もが愛だの恋だの身投げだのって腹の探り合いや駆け引きめいたことしやがって」と吐き捨てつつも伺って、大人が子供に逆行し子供が大人に成長し、徐々に本音や秘めた夢がジワジワと炙り出されていく丁寧な演出が秀逸!

ジャン・ギャバンの一挙一動のきめ細やかさは、年齢による惰性とまだまだ人生はこれからだという希望の狭間で揺れ動く生々しさを見事に体現する圧巻な存在感。
「腹黒」という訳でいいんかいというツッコミは置いておき、そんな何を考えているのかわからない魅惑的な美しさを、佇まいひとつで表現してしまうニコール・クルーセルも素晴らしい。

建前や常識を気にしながらも一周回って発露する想いの美しいこと。上部を漆喰で塗りたくって奥底に沈めた感情は大人も子供も同様で、変にひねてる方がタチが悪いと言わんばかり。冷静に美しく滲み出るよう浮かび上がらせる愛のリアリズムは、安易に夢を語ってドラマチックなドラマを生むという虚構にはない鮮烈なインパクトを残す。

主人公は酒場と映画館のオーナーであるので劇中「白痴」や「タブウ」を見ているシーン、船乗りの映画(なんだろう?「戦艦ポチョムキン」は安易か?)などが出てきて印象的。
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