みおこし

港のマリィのみおこしのレビュー・感想・評価

港のマリィ(1949年製作の映画)
3.4
フランスが誇る名匠マルセル・カルネ監督作品。

恋人オジールの父親の葬式参列の為にとある港町にやって来た男シャトラール。そこの酒場で働くオジールの妹マリーに一目で夢中になり彼女に言い寄るが、マリーは自分よりもはるかに年上の彼に見向きもせずあしらう。しかし、そんな彼女も交際している床屋の若者マルセルの嫉妬深さに嫌気がさしており、次第にシャトラールの存在が気になり始め…。

シャトラール役には名優ジョン・ギャヴァン。もう登場した瞬間に明らかに女好きだと分かるほど、かな~りヤラしい目でマリーを見つめるシャトラールおじさん(笑)。本人は単なる火遊びのつもりだったのでしょうが、何度も足しげく酒場に通ってはマリーに言い寄るうちにマリーのほうもまんざらではなくなってきます。確かにマリーの彼氏のマルセルは、絵に描いたようなメンヘラ気質の男性で彼女を束縛してはヒステリーを起こすので、オトナの余裕あふれるシャトラールについ恋してしまうのも納得かも…。にしても父親と娘以上の年齢差ですが…!!
本作を観ながら、フランス映画においては相手がいる状態での不倫や浮気を描く場合でも、「恋しちゃったから仕方ない!」とばかりにストレートに突き進む作品が多い気がしました。もちろん当人が罪悪感を抱いている描写や、浮気されている側の切ない感情を描くケースもあるけれど、基本的には様々な愛の形に対して寛容。本作でも三角関係どころか四角関係に近いドロドロな人間模様が繰り広げられますが、それでいて決して愛憎劇ではないどこか笑えるコメディとして完結している点がとってもユニーク。出てくる人物がみんなあまりにも自分の感情に対して正直だから、逆に憎めないんですよね(笑)。

のどかな港町を舞台に、シャトラール、マリー、マルセル、オジールの4人の恋模様を時にユーモラスに、時にドラマチックに描いた秀作でした。どこかウディ・アレン作品を彷彿とさせる、静かな世界観と優しくて秀逸なタッチ。
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