らいち

ホビット 決戦のゆくえのらいちのレビュー・感想・評価

ホビット 決戦のゆくえ(2014年製作の映画)
4.0
「ファンタジー映画の神」と、勝手に崇めている「ロード・オブ・ザ・リング(LOTR)」。その前日譚を描いた「ホビット」シリーズもいよいよ完結編だ。

で、「決戦のゆくえ」を試写で観ることができた。
完結編に相応しい渾身の映画だった。

LOTRから、ホビットになって作風は大きく変わったと思う。中つ国全体の存亡をかけ、種族の壁を超え命をかけた冒険に出る「LOTR」に対し、
ドワーフ族の故郷奪還の旅にお伴する、ホビットの青年を描く「ホビット」である。そもそもの話のスケールが違うのは明白だ。
また、ホビット、人間、エルフ、ドワーフの4種が同じ位置づけにあった「LOTR」に対し、主人公はホビットであるが、画面の多くをドワーフが占め る「ホビット」である。キャラに華やかさがあった「LOTR」に比べて、「ホビット」には色気がない。原作通りのプロットだったと思うが、「LOTR」のスピンオフ感はどうしても否めない。

この埋められない違いを、ピーター・ジャクソンも織り込み済みだったはずだ。「LOTR」にあった、芸術性へと昇華する深いドラマを「ホビット」で描くことは難しい。であれば、「ホビット」が持つ利点を最大限に活かし、娯楽作へ振り切ればよい、と。

1作目では、人間という現実世界に近いキャラクターを排し、観客を中つ国に呼び戻すために、多くのファンタジー要素を盛り込んだ。2作目では、ホビットとドワーフが持つ形状の旨みを活かし、かつ、エルフというスパイスを加え、躍動感たっぷりのアクションで魅了した。

3作目となる本作は、一言で言い表すならば「決着」である。本シリーズの決着は「戦い」によってのみ得られる。まさに「決戦」だ。

上映時間、約2時間半の大半を、そのバトルアクションに費やす。ステージの変化は乏しいものの、スリルと興奮であっという間だった。

序盤は前作から繋がるドラゴンとの戦い。ドラゴンのスケール感と、その迫力を引き出した演出が素晴らしい。アトラクションに近い臨場感も手伝い、のっけから作品世界に没入する。そして、前作でトーリンたちが竜から奪還した「はなれ山」での決戦である。
戦いは三つ巴から、四つ巴へ。四つ巴から五つ巴へとスケールアップしていく。個人的に は6つ巴と言ってもよいと思う。迫力とスリルに飲み込まれる。地上戦と空中戦で空間は大きく広がり、地上では巨大なトロールも加わり、スケールの違いによる、アクションの変化が目まぐるしい。

「LOTR」から続く、引きのショットで捉える大群VS大群のバトルに加え、本作で特に注力されているのは、1対1の戦闘シーンだ。決着をつけるために、倒すべき相手とはサシで勝負をしないと始まらないのだ。その内容はとても壮絶なものであり、感動のラストへの布石になる。ファンタジーといえど、どんな代償も厭わない。そのシリアスでガチな展開は「LOTR」からの系譜である。これだから好きなのだ。

また、本作を描く上で重要だったのは「LOTR」に繋げる ことだ。サウロンがどうやって支配するようになるのか、種族を超えた旅の仲間が、どうして繋がることになったのか、その一端が描かれていてファンとしては感慨深い。

上映後、劇場から大きな拍手が挙がった。「見届けられた」という満足感と共に、「終わってしまった」という喪失感が去来する。そして、「ロード・オブ・ザ・リング」をもう一度見返したいと思った。ピーター・ジャクソンに感謝。

【70点】

PS 初めて、秒間48コマの「ハイ・フレーム・レート3D」を体験したが、映像のブレが少なくなった分、映像が鮮明に映り、3Dの没入感がハンパなかった。ただし、XpanDの3D眼鏡はダメ。以前の重い眼鏡ではなくなったが、レンズと眼球の距離が近すぎて、まつ毛が当たって痛い。最強は「ハイ・フレーム・レート3D」×「IMAX」である。
らいち

らいち