福福吉吉

半落ちの福福吉吉のレビュー・感想・評価

半落ち(2003年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
現職警部の梶聡一郎は3日前に妻の啓子を殺害して自首してくる。啓子はアルツハイマー病であり、聡一郎は啓子に依頼され殺害に及んだことを自供するも、殺害から自首に至るまでの空白期間について頑なに沈黙を続ける。現職警察官の犯行ということで、自白を捏造する県警だったが、その空白期間について記者や検事、弁護士は真実を追い求める。

◆感想◆
本作は犯人の梶聡一郎(寺尾聰)が妻を殺害してから自首するまでの空白期間について悩み、苦しみながら真実を明かそうとする刑事の志木(柴田恭兵)や記者の中尾(鶴田真由)、検事の佐瀬(伊原剛志)などの人々のそれぞれの姿を描いた群像劇となっており、多くの登場人物たちがストーリーに絡んでいくものの、その人間関係が分かりやすくて、梶総一郎の心情に観客が集中できるものになっていました。

ストーリーとしては本作がすんなり感動できない要素として、県警トップと検察のパワーゲームが前半に大きく描かれていて、聡一郎の心情を知りたい私としてはとても邪魔に感じました。県警の中でも真実を求める志木刑事が県警トップに握りつぶされたり、佐瀬検事が自白の捏造を暴いてもトップ同士でなかったことにされたりして、黒い部分が多すぎました。

ストーリー後半になると、梶聡一郎と啓子、その息子で病気で亡くなった俊哉の話が描かれるようになり、やっと本編が始まった気がしました。アルツハイマー病の苦しみとその命の尊さについて重厚に描いていきます。誰が正しいなんて分からないですが、これについて裁判官の藤林(吉岡秀隆)が自身の父もアルツハイマー病であることも併せて、聡一郎に言葉をぶつけるのですが、かなり心にきつく感じました。聡一郎を糾弾するとともに自身を律しているようでした。

弁護士の植村(國村隼)は有名になるために聡一郎の弁護を貰うのですが、途中から聡一郎のことを守りたいと思うようになり、面白いキャラクターでした。また、啓子の姉である島村康子(樹木希林)が証人として語る姿は心を強く打たれました。

かなり重厚な内容で観ていて疲れましたが、誰もがぶつかる可能性のある問題への提言として観て良かったと思いました。聡一郎が背負った刑期が重いのか軽いのか、私には分からないです。

鑑賞日:2024年3月30日
鑑賞方法:CS WOWOWプラス
(録画日:2023年5月13日)
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