エンポリオ

半落ちのエンポリオのネタバレレビュー・内容・結末

半落ち(2003年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

殺した者と殺してやれなかった者、殺さない者。
自らの妻を殺害して出頭した元警部、梶。殺害を認める彼の取り調べは完落ちとしてすぐさま済まされるかと思われたが、殺害から出頭までの二日間を断固打ち明けない梶の姿勢に、半落ちの状態のまま事件は裁きへと進んでいくこととなる。
様々な要素が浮かんでは沈んだり、スポットライトが当てられる人物が何度か変わったり、と幾つか提示されたであろうテーマの中でも最も分厚く、この作品を強く支えているものが判別しにくかったりはしたものの、警察関係の腐敗モノなどと簡単に括ることを許さないような、生きること、死ぬことへの執着がほの暗く光っていた。向き合い、見つめることで見えてくる人間の根っこは余りにも生々しく、間に合わせの理屈では耐えられないほどの重量感を持っている。腐敗の様相や、それを肉付けするための生存競争、冒頭から置かれる殺人事件など気に掛かる部分が少なくないながらも終盤までテンションを保てた要因はこの辺りにあるのではないだろうか。
殺した者、殺してやれなかった者、殺さない者。一体誰の想いが正気で、誰の想いが狂気なのだろうか。
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