ハマジン

風のハマジンのレビュー・感想・評価

(1928年製作の映画)
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優れたディザスター・フィルムは精神の変容を描く優れた恐怖映画に直結する、という最良の例だと思う。ホラー好きは絶対に見ておいた方がいい名作ですが、何と!現在国内絶賛未ソフト化!

「外的環境に対する人間の知覚とその反応」という映画における運動の基本があるけれども、本作はその環境を「暴風がひっきりなしに吹き荒れる大地」という極限値に設定することで渦中にいる人間の反応のボルテージを限界点まで跳ね上げ、その環境に適応できない「よそ者」のヒロインを恐慌に陥れる。生き物のようにのたうちまわる砂嵐が白馬に形象化してリリアン・ギッシュの顔を恐怖に凍りつかせ、知覚の飽和状態に陥った彼女に深刻な眩暈をおこさせるくだりや、クライマックスで起こるある衝撃的な出来事のはずみで、ずれていた皿がカチリと合わさるショットには震え上がった。怖い!

「扉をはさんだアクションによって示される男の妄執と女の恐怖」というモチーフがヴィクトル・シェストレムの映画にはよく描かれるけれども、スタンリー・キューブリック『シャイニング』を改めて見ると、シェストレムの作品がどれだけ影響を与えているのかがよく分かって面白い。例えば、『霊魂の不滅』で妻が閉じこもる部屋の扉を斧を使ってカチ割るシェストレムはご存知のとおり『シャイニング』のジャック・ニコルソンに、同じく『風』で扉をこじ開けようとする男の手を見て恐怖のあまりパニック状態になるリリアン・ギッシュは、同作のシェリー・デュヴァルに引き継がれている、といった具合。
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