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風のTSのレビュー・感想・評価

(1928年製作の映画)
4.0
【可視化された風】85点
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監督:ヴィクトル・シェストレム
製作国:アメリカ
ジャンル:ドラマ
収録時間:75分
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以前から見たかったのですがソフト化してなくかなり視聴困難であった作品。ユーザーさんから教えてもらい、やっと鑑賞できました。本当に感謝です。ありがとうございました。
シンプルなタイトルの作品ってどことなく唆られませんか?今作は今まで目に見えなかった「風」を極限にまで可視化することに成功した作品。ジャンル分けは難しい。メロドラマなのですがホラー要素もあります。いやはや、リリアン・ギッシュの演技が相変わらず素晴らしい。『東への道』といい『散り行く花』といい、彼女の表情の変化はもはや国宝レベル。サイレント時代で音が出なかったからこそ、表情が表現の命であったのでしょう。

ヴァージニアからテキサスに住む従兄のヒバリー家に移動してきたレティ。彼女の優しさはヒバリー家の子どもたちの心を動かした。それを良く思わず嫉妬していた妻のコラはある日彼女を追い出そうとするのだが。。

乾燥地帯の強風なので砂埃がこれでもかというくらい立ち上がります。途中、ハリケーンが街を襲来するため、風という自然現象の恐ろしさを強烈に伝えています。また、この風はレティ自身の気の迷いを表したものであるとも推測できます。レティは新天地にきたわけですから不安だらけ。しかも男の扱いにはまるで慣れていないようでして、列車でナンパしてきた男を良いと思ってしまうくらいある意味純情な女性。それが災いして、その男からもつけられるし、何を思ったのか咄嗟に全然好きでもない人と結婚するのも不安定すぎます。

今作の見どころはなんといっても終盤。詳細は伏せますが、もうこのあたりはリリアン・ギッシュの演技に脱帽です。また、そんなに吹くのかよと言いたくなるほどの風。ここまで強烈な風を浴び続けたら誰でも心身ともに弱っていくでしょう。あの展開はホラーとしか言いようがないですが、最初から不安定だったレティをじわじわとどん底に陥れていく展開は秀逸です。

個人的にはかなり気に入った作品。サイレント映画の中でも上位に入ってきそうです。視聴困難なので切実にソフト化やら配信を望みます。
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