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硫黄島の砂のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

硫黄島の砂(1949年製作の映画)
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戦後すぐ1949年に制作され報道カメラマンの映像が含まれ、また実際に戦った海兵隊が参加していること以外には特筆することのないアメリカンヒーロー映画。ジョン・ウェインが主演であり、ネイティブアメリカンと戦う娯楽の西部劇の延長線にある。初めて(途中から)早送りで観ました。

そんな戦いの映画の定型を思うと、完全な絶対悪を作り上げて戦う作品はファンタジーやSFものだけで十分。アメリカンヒーローが戦う相手は2万人近くが亡くなった日本人。実際にあった戦争を善悪分けて観ることはできないです。善悪を際だたせて作られた作品はプロパガンダか娯楽作品。戦争映画の見方を改めて確認させてもらった反面教師的な作品でした。

戦闘シーンは短く3分の1もありません。ジョン・ウェインを中心としたヒューマンドラマでもあり、硫黄島上陸前の海兵隊の休暇や演習がメイン。日本兵も三人くらいしか現れません。

ピュリッツァー賞を獲ったローゼンタールが撮した星条旗を摺鉢山に掲げるシーンがラスト。米兵の士気が上がるきっかけになったと言われていますが、実際はその場所に翌日日章旗が掲げられ、また星条旗、そして日章旗と、交互に旗が掲げられました。

以下、映画の筋とは関係ないことです。

アメリカは戦場カメラマンを連れてシンボリックな写真を公開するだけでなく、実際に亡くなった米兵の人数も報道しているところが日本の大本営発表と違います。広報の姿勢というのか戦略というのか。犠牲者の人数は敵への憎しみを駆り立て団結して戦い抜こう、勝ちたいという気持ちを支えるでしょうが、大本営発表が強気なウソでなく、本当の犠牲者の人数を知らせていたら、日本人はどう行動したのかな、と考えてしまいました。アメリカの硫黄島の多数の犠牲者の発表はアメリカでも問題になり、抗議が殺到したそうです。日本人の憎しみの対象は敵国になったか、それとも、国への非難を正当化させたか。たらればですが。
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