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インフェルノのすずのレビュー・感想・評価

インフェルノ(1980年製作の映画)
3.0
ある時こつ然と失踪したというロンドンの建築家 バレリなる人物が記した日記を元に出版された『三母神』という古書にはこうある。

バレリは〝3人の母〟の依頼で家を建造した。

最年長〝ため息の母〟(サスペリオルム)はドイツのフライブルクに。

美しい〝涙の母〟(ラクリマルム)はローマに。

残忍な〝暗黒の母〟(テネブラルム)はニューヨークに。

そして、この災いの女神とされる三姉妹の秘密に近づくための〝3つの鍵〟について。

ローマの音大生マークは、姉のローズが住むニューヨークの古いビルを訪ねる。しかし、彼を呼び出した当の本人 ローズの姿は見あたらない。マークは行方不明のローズを探し始めるのだが…。

ダリオ•アルジェント〝魔女三部作〟第二弾。

『インフェルノ』= 地獄、灼熱、業火

『サスペリア』との繋がりも見え隠れしつつ、赤と青を基調にした映像も前作との類似性を意図的に示すかのよう。特に本作は青い色調が多用され、前作の深紅の世界とは違うよりダークな雰囲気が漂う。

そしてヴェルディの『ナブッコ』の合唱曲をはじめ、シンセとオペラ音楽を融合させたような音響アプローチが、ジャッロ的誇大虐殺の描写ごと包括し、とある西洋の神話的で荘厳なホラー世界へと導いている。

シリーズものとして捉えると謎の一端が示される重要な作品として外せないけど、単体でみると、何となく目新しさに欠ける、いつものダリオ式方法論で描かれたサスペンス要素(このお家芸が好きとも言えるけど…)に対して、不得手なオカルト要素のパンチが弱目というか、前作の展開をほぼそのまま踏襲しながら、あの妖しい美しさは少々トーンダウンと言わざるを得ず、何となく当たり障りのない出来とも言えなくはない印象だった。ちょっと期待感が先行しすぎたせいかも。それでも、最後のシーンは本作を締め括るに相応しい地獄のような絵図であった。


※猫虐待の罰とは言え、浅瀬の水辺のネズミの大群のなかでガチで体を張った俳優さんの勇ましい心には乾杯。
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