レインウォッチャー

インフェルノのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

インフェルノ(1980年製作の映画)
4.0
レジェンド『サスペリア』に端を発するダリオ・アルジェントの「魔女三部作」二作目。わたしは三作中ベストかも。

何より、前作から更に禍々しく、忌々しく、麗々しく進化した美術面の攻撃力がカンスト!中でもオープニング15分強は完璧と言って良い。

場所はニューヨーク、ある古書をきっかけに住居の館の秘密に気付いた女性が、地下室に踏み入っていく。
館を妖しく照らす赤と黄金のライトアップ、通りを染めるのはブルー、地下への梯子から見上げる切り取られたインディゴの空に浮かぶ白磁の満月。(月は今作の重要なアイテム。)
地下には滴る水が穴に溜まっていて、落とした鍵を拾うため潜った先にはクラシックな調度品が沈黙のまま眠っている…そしてそこへ!

画面を充たすデカダンな香気と緊張感、流れるようなシーンの連なりにうっとりしてしまう。ブルーレイ画質だったら目から涎垂れてたろうな。
続く本編でも特に室内の造形・照明がいちいち最高で、「館系ホラー」として史上トップクラスの魅力を放っていると思う。

一方のストーリーはといえば、テキトーというかイビツというか、なんとも奇妙な味。まず主人公が誰なのかもなかなか安定しないし、意味ありげに登場する善さそうな人も怪しそうな人もとにかくバコバコ死ぬ。

古書の秘密を探る→死ぬ。
猫をいじめる→死ぬ。
なんか欲を出す→死ぬ。

何ここ米花町?(ニューヨークです)

一応、黒幕として古くから生きる魔女・「暗闇の母」テネブラルムの存在があるのだけれど、目的がよくわからないうえに全部コイツのせいなのかどうかも不明。手を下すのは、ジャッロ映画らしい謎の黒手袋マンだったりするのだ。

女性は美女揃い、殺しのシチュ・バリエーションは嫌なアイデア満載で、これらを見せたいがために並べたって感じにも見える。
しかし、それもまたヴィジュアル全振りの異常なバランスを際立たせ、忘れがたい作品に仕上げているともいえ、どうにも偏愛認定だ。

『サスペリア』もいいけど、『インフェルノ』もね。
これからの半生は、このことを伝えながら全国八十八箇所をまわろうと思う。

-----

音楽はなんとELPのキース・エマーソン。重たい管弦から性急なハードロックまで。
『サスペリア』はゴブリンだったり、プログレ界隈とホラーの距離が近い時代があったのかしら。