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CURE キュアのyksijokiのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
3.9
全体としてゾクゾクっとくる恐怖感があって映像的なギミックを巧みに用いていて非常に怖かった。フラッシュバックとか白昼夢とか、非現実的な要素に巻き込まれていく人たちの様子を現実との境目なく表現している部分がとても魅力的で引き込まれた。97年の作品とは思えない美的センスの新しさというか新鮮さがあってあとはラストにかけてある種のペルソナに近い展開というかミイラ取りがミイラにという両者の同質化みたいなものがズンズン進んでいくところはとても良かった。

気になったのは効果音と音の表現のところで九〇年代だからこそのビビットな音効が非常に印象的で良かった。皿の音とかビール瓶を開ける音とかそういうものを音効技師さんが出していると思うけどそこの表現が非常に浮かび上がってきていて好きだった。洗濯機が空回りする音や電子レンジの音とかそういう生活音の表現がとても映画の中で刺さる要素としてあってGoodでした。

CUREというタイトルの通りの癒しがテーマ人はなっていて誰しもが心の奥底で抱えている世の中に対する苛立ちや怒り、憎悪の類を世の中だけでなく相手にも表現してしまうことで抑制していた自分を解放して癒されていくというお話で、途中からだそこが主人公の役所広司の心情とSyncしていくことでどんどん取り憑かれていく様が非常に人間的な恐ろしさを表現していてこわかった。

サイコキラーものなのかなと思って見ているとある種普遍的な動機というか信仰に近しいものが根幹にあってそういうものを明らかにしに行こうとすると一回向こう側に入り込まないと明らかにできないと言うところが非常におもしろいし、全体的に暗いタッチの中で徐々に非現実的なカットが増えていくのがとても展開としての巧妙さがあった。

全体的にカメラワークが独特で特に自宅に帰宅する役所広司を繰り返して断続的に捉えたショットが数回入ってきてココが長回しで奇妙でなんか怖くて印象的だった。

ラストカットも印象的だったしエンドロールの独特なお洒落さも含めて細かい要素が非常に繊細かつ大胆に描かれていてとても良かったです。

役所広司の目の下のクマが印象的
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