Masato

CURE キュアのMasatoのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
4.3

黒沢清監督の代表作のサイコサスペンス。

これは凄まじかった。これよりも怖いと思う映画はあるが、ジャパニーズホラーの恐怖感覚で言えば真骨頂かもしれない。というのも会話劇やミステリー演出で真っ向勝負しているからだ。いくらでも怖がらせる道具を出せるが、必要最小限しか使わない。なのにめちゃくちゃ怖い。こんだけやったんだからそりゃ怖いってのはあるけど、こんだけやってないのに怖いっていう分不相応の怖さは逆にしてやられた感があって気持ちいい。

基本長回しで劇伴が無いのが最高。何が起こるか分からない緊張感を漂わせる。劇伴が無いかわりに地響きのような重低音と誰かの発する音が劇伴代わりになっているのが良い。コレだよこれって感じ。一つのカットに集中できるって素晴らしい。

特に萩原聖人の演技が凄まじい。人を怒らせる天才のイライラさせるキャラ。煽って引き寄せた瞬間に心を掴んでいく怖さが異常。ファニーゲームとか意識したのか?って思ったけど製作は同時期。後にチェイサーのハ・ジョンウとかも似たような言動をしてて、このミステリアスさがゾワゾワしてくる。

人の心の奥底にある憎悪ややりきれなさを引き出して催眠していく。催眠は倫理観を動かせないから人は殺せない…しかし、人間が人を殺すか殺さないかの倫理観なんてものは存在しなく、建前でしかない。いつでも誰でも人を殺せてしまう土壌が存在しているということを明らかにする物語でもある。

間宮による催眠のそれはカウンセリングと似たような形式で執り行われていく。相手の悩みを引き出し、話させ、解決へと導く。操ると同時に奥底にある感情も解放していく癒やし。しかしその結果は、癒やすとは程遠い殺人。皮肉もこめられたタイトルなのだろう。

オカルトっぽくラストは不穏でホラーらしい絶望的なエンディングを迎える。それも静かに。
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