ヨル

CURE キュアのヨルのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
4.4
冒頭からエンドロールまで、ひたすらに無機質な感覚を覚える映画だった。
全体的に冷たい雰囲気が流れていて、かなりショッキングなシーンがあるにもかかわらず、スプラッタ映画のような「不快感」はなかった。しかし「怖さ」は確かに存在した。

人の心の奥底には、自分でも知らない自分の本性が隠れている。本能的で衝動的な心の動きもそこにある。これらは常に「社会的な自意識」に抑えつけられている。だがそれは、知らず知らずのうちに僕たちのストレスになっていて、僕たちはそれをどこかで発散したいと感じている。
では、心の奥底を完全に解放できればどうなるのだろうか。ストレスの原因が喪失し、人としてではなく、動物としてあるべき姿へと戻っていくのではないだろうか。それは社会的動物である人としての死を意味するが、ある意味では救済となり得る。
この映画で起きていたのは恐らくこれである。間宮によって心の奥底を解放された者たちは救済を得ると同時に、殺人者という社会的でない存在に堕とされる。

この映画から感じる「怖さ」は、社会的な存在である自分を失うことと、自分の無意識が殺人を望んでいるのではないかという疑念が生み出す恐怖なのだと思う。当たり前にそこにいて、当たり前に住み着いている無意識の自我が決して異常なものではないと、本当に言い切れるのだろうか。
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