CURE キュアのslowのレビュー・感想・評価

立ち入るべきではないという心理より先に、肉体は早々と風景に溶け込もうとしていた。それは眠りとも異なる、今となってはもう別物となってしまった色と色とが混ざり合う直前の緊張感、それに近い。ただ、恐ろしい程に穏やかなもので、だからこそ穏やかなのだと、それは囁き、わたしは影を踏まれていたことに、ようやく気が付いてしまう。その頃にはもう、内的な障害など何もかも、ここには見当たらないのだ。白日のもとにさらされる豊かな絶望。振り下ろされる鈍器のような善意。侵食が始まる。後のことは、よく覚えていない。