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プリティ・ベビーのキーのネタバレレビュー・内容・結末

プリティ・ベビー(1978年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

ルイ・マル監督の1978年公開作品で、渡米後初の作品。
1917年のニューオーリンズを舞台に、娼館で産まれ、娼婦である母親と同様に、娼婦として成長していく12才の少女を描いた物語。

ヒロインの少女を演じた、当時は子役のブルック・シールズが、とにかく美しい映画。
他人に~きかれ~りゃ~お前のこ~とを~🎵
年の~離れ~た~妹と~🎵
という、「花街の母」と同様に、スーザン・サランドン演じる娼婦ハティは、娘のヴァイオレットを妹だと客には言ってます。
この母親と娘の関係が、初めから終わりまで描かれています。
娘のヴァイオレットも、当時の娼館で産まれた少女には当たり前なのか、年齢的にそろそろ娼婦としてのデビューを控えています。
そんな母娘がいる娼館に、娼婦をモデルに写真を撮りたいとやって来たのが、キース・キャラダイン演じる写真家べロック。
ヴァイオレットは、娼館に客として来る男達とは違う雰囲気の芸術家タイプの男を目にして、恋をしてしまいますが、べロックは子供だからと相手にしません。
べロックが撮る娼婦達の写真には、全くエロさが無く、そのエロさが無い、というのは、この映画にも言えます。
女性の裸が出てきても、全くエロさがありません。

写真家べロックは、芸術家タイプであると同時に学者タイプで、娼婦達に性的興味を覚えること無く、写真を撮らない間でも、娼婦や客の様子を観察しています。

映画の前半は、このべロックが見た娼館の姿をノンフィクション的に描いた、「ニューオーリンズ娼館物語」といった風情があります。

映画が1時間過ぎた頃、ふとしたかくれんぼ遊びをきっかけに、べロックが急速にヴァイオレットに惹かれていきます。

その場面が、あまりに素敵で、一気にときめく恋愛映画へと雰囲気が変わります。
母ハティがいい客をつかまえて結婚。娼館に残ることを選んだヴァイオレットは、娼館でこっぴどく怒られたことをきっかけに娼館を飛び出し、べロックの住む家に転がり込んみ、そこから二人の同棲生活が始まります。
年の離れたわがままな年下女性に振り回される年上男性、という設定は古典的な物語からよくあるものですが、自分は1980年代のフランス映画『ベティ・ブルー』を思い出しました。
娼婦達を描きながらも、ひたすら明るい雰囲気の前半と違い、徐々に沈鬱になっていく雰囲気は、モノクロ映画時代のルイ・マル映画「恋人たち」「鬼火」も思い出します。

それでも、べロックとヴァイオレットの結婚でやや雰囲気が明るくなりますが、成功した土建屋の女房として幸せそうな母ハティが、ヴァイオレットを迎えに来たラストで、観ているこっちは、完全に鬱な気持ちにさせられます。
「鬼火」の主人公のように、べロックも自殺するんじゃないか、という暗さです。
ラストカットのヴァイオレットの表情も、非常に印象的で、これからの物語を観るこちら側に想像させられます。

結局、少女を大人として成長させられるのは、男性との性行為ではなく、好きな人との別れなんでしょうか。
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