シモン

ファーゴのシモンのレビュー・感想・評価

ファーゴ(1996年製作の映画)
5.0
3回目
やっと理解できた、、

人に気を遣おうと相手を「見透かしている」と、あるいはジャッジしていると、いずれ人を「見下す」ような態度をとるようになってしまいますよ。あの富豪の義父や口の悪い殺人犯のように。というお話

マージは終始、馬鹿な同僚に気を遣ってジョークを言ったり、励ましたりする。
ジェロームが逃亡を図る直前のシーンで、マージが彼の仕事部屋をじろじろ見ているのは、まさに彼の人生を見透かそうとしている行為

逆に見下す場面としては、ジェロームに対する義父の態度や、相棒に対する口の悪い殺人犯の態度、そしてジェロームの妻が誘拐されてニワトリのように飛び回るシーンなどなど


不幸なことに、最後にマージはまたしても夫に気を遣おうと、お得意の起点を効かせて、悩む夫を慰めてしまった。あれはバッドエンドを示唆しているのではないか?
それにしても終わりのシーンの「あと2ヶ月だ」って言葉はゾッとした。2ヶ月後に子供が産まれたら、今まで気を遣うことで成り立っていた夫婦関係が崩れていくっていうことだよね。。
夫がマージから馬鹿にされるようにならないことを願う


一方で、見下される側も被害者に止まらず加害側に回っていることがこの映画の難しいところだ。彼らは「嘘をつく」ことで、他人からの自分の見られ方を必死に守ろうとする。人は誰でも自分のプライドを傷つけられそうになると嘘をつきたくなる。
ジェロームはもちろんのこと、学生時代の同僚マイク・ヤナギダもその一人。
もしかしたらマージの夫もどこかで嘘をついている可能性も…?

この映画はマージ率いる「人を見透かす/見下す側」と、ジェローム率いる「嘘をつく側」とで双方に別の悪が潜んでいて、そのせいで初めから終わりまでシュールで気味悪く感じてしまうという素晴らしい作品だ。

実は、実話ではありませんでした!っていうのは、コーエン兄弟なりのブラックユーモアなのかな?
シモン

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