ダイナ

ファーゴのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

ファーゴ(1996年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

簡単なあらすじ
ノースダコタのファーゴという街にて、狂言誘拐で自分の妻を攫わせ義父から大金をせしめようと企むジェリーは、自分の会社で働く男のつてからカールとゲアという男に誘拐実行の役を任せる。当初は予定通りに事が運ぶかと思われたが、予期せぬ血が流れたことにより3人を中心として負の連鎖が始まっていく。

映画の初めに「これは実話、生存者の意を汲み取って一部名前は変更しているけど大体は忠実に再現してますよ」って文字が出る。で、ずっと「こんな事件があったんだぁ」って感じで、世界丸見えやアンビリーバボーで特集されそうな事件だなと思って鑑賞、しかし鑑賞後今作について調べてみたら全くのフィクションらしい。しかもこの作品はジャンル分けするとコメディだとか。いやこっちはずっとサスペンス見てる気分でしたよ。コメディつってもそんな笑うシーンとか思いつかない。奥さんが布袋被ったまま逃げるシーンとかカールは笑ってたけどこっちは「あー可哀そうだな」ぐらいの気持ちだった。強いて言えばカールの顔を誰もが「変な顔」程度で特徴言わないところとか日本人?の旧友がマージにアタックかけてきたところか?

この映画、どんでん返しはなければスカッとするような展開もない。ただただ嫌な事が現実に起こりそうな範囲の中で起きて、その風景を映してる感じ。だけど、退屈な映画かと言われるとそんなことはなくて、悪だくみをしてる3人を中心としての意見の食い違いや想定のズレがラストにどう終結するのかだとか、中盤から警察官の捜査目線も加わっていつ犯人達を追い詰めるのかだとか、そういう先が気になる面白さで映画を観てたし、鑑賞後に関しても、歯車がズレたら報連相必要だよな~とか、こんな映画として成り立つ話が実話なんだね~とか思ってた。

映画の雰囲気がリアルだと思った理由、「実話」ってワードが念頭にあったのもあるけど、それを裏付けるように映画の中身、舞台や人がリアルに感じたのが大きい。舞台のファーゴなる街は雪が積もってる都市。なんで出てくる人物は外出する時は大抵コート着てる。そんで外に出るたびに雪を踏むあの「モサッ」って感じのかすれた音が鳴るのが、耳障りでもあり、実際の雪をリアルに感じる。また人間関係について、家の飯を食べないでマクドナルドに友達に会いに行く子供だとか、それに苦言を呈する爺さんだとか、車会社が勝手につけたオプションに対して腹を立てる客や、客に頭の上がらない営業部長だとか、朝起きる妻に玉子焼いてあげる夫だとか、出てくる人物の行動というか役の設定が「なんかこんな人いるよな」感があって、映画の内容が現実的に感じる。ゲアみたいなやつがいたら怖いけど、こういう危ない奴も昨今のニュースとか見てたら非現実的な人物、「こんな奴いねえって!」とは思えない。いわば出てくる人達が実際に存在する人からスポイトで設定を抽出して役に注入してるように感じるくらいリアル。

最初、警官に妊婦って設定なんか意味あるの?って思った。で「そういえば実話ベースの映画か、じゃあ人物再現しただけか」ってことで納得、だけどこれが実話じゃないんなら、女性警察官を妊婦設定にした意味って何かあるのだろうか。マージ(女警察官)目線では全くピンチに陥らない。お腹に赤ん坊を抱えながらも着々と手がかりを集めて真相に近づいていき、最終的には事件を解決する。マージのお腹にいる赤ん坊はこの世界におけるバランスをとる錘みたいなものかと考えた。この映画全編通せばマイナスなことしか起こっていない。人は死にまくるし、この事件に関わる人は多くが不幸な末路を辿る。唯一幸せな未来を予想されるのがマージ夫妻。映画内で死が多発しているため今後生まれてくる命(生)を主役に宿すことにより、ただ不幸な死だけが訪れる世界ではなく、またどこかで命が生まれてくる、といった風に世界の中でバランスをとっていたのかもしれない。死だけが発生する世界よりかはどこか現実感がある。

こんな感じでね、映画の内容が妙にリアルだから実話って信じちゃったんですよ。冒頭であんなメッセージ出されてこんな現実感ある内容だったらそりゃ信じますよ。

ジェリーの猟奇的な行動(メモ書き、発狂、逆キレ)とか、マージの食事シーン(ハンバーガーとかバイキングとか淡々とりもり食べてる)とか、駐車場でカールが車探しながらぐるぐる運転するシーンだとか、すごい重要って事では無さそうだけどなんか印象に残るシーンが多い。

監督の作品の傾向だとか、アメリカ特有のネタなんかが裏にあってそれを知っていればもっと楽しめるらしい。が、それらについては知らんので2度目視聴の時の楽しみに取っておく。
ダイナ

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