note

ドリアン・グレイ/美しき肖像のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

美貌の青年ドリアン・グレイは、知人の画家バジルのモデルを務め、彼の肖像画が完成する。誰もがその絵の出来栄えに魅了されるが、ドリアンは肖像画は若く美しいままなのに、自分は老いてゆくことに不平を漏らす。「肖像画が自分の代わりに年老いていき、自分が永遠の若さを保てるなら悪魔に魂を売っても良い」と願う…。

オスカー・ワイルド唯一の長編小説「ドリアン・グレイの肖像」の時代設定を19世紀末から現代に移し替え、原作に漂う頽廃的雰囲気と性描写をあからさまに強調した異色作。
永遠の若さを保つ代わりに、彼の肖像画が醜く老いてゆくとは、なんともオカルトチックである。
悪魔に魂を売り飛ばしたドリアンが、若さと美貌を武器に男女問わず篭絡し、色と欲の世界に暮らす姿を描いたピカレスク・ロマンの佳作だ。

ドリアンは、社交界にデビューし、たちまちその美貌で人々を惹きつけるが、恋人の無名女優シビルは、彼と恋をして満たされたがため、女優としての演技ができなくなる。
さらにモテまくるドリアンへの嫉妬に苦しみ、突然の事故で命を落とす。
最愛の女性を失った失意のドリアンの生活は退廃していくが、いつまで経っても彼は歳を取らない。

主演は晩年のルキノ・ヴィスコンティ監督の寵愛を受けた美男俳優、ヘルムート・バーガー。
男も女も惚れてしまう美貌を持ったナルシシストなんて、そこらの美男子では、お笑い草になるが、なかなかどうしてハマっている。
遠目に見るとキザな野心家に見えて、アップになると繊細な表情を見せるとは、まるで育ちの良い貴族のようだ。

原作は怪奇幻想譚だが、本作はエロティックなファンタジーとも言える物語で、現代のカサノヴァの物語のような印象。
ソフトコアポルノといって良い程バーガーを含めた登場人物達が脱ぎまくる。
途中、ドリアンが全裸で股間を隠して登場するシーンはやりすぎで、さすがに爆笑したが。

脇を固める女優たちは大変美しいが、感情移入しないよう、シビル以外の人物の背景は語られない。
それが余計にバーガーの美貌を引き立てる効果を生んでいる。

女性だけでなく、原作通り、同性愛を分かりやすく想像させる描写が70年代にあるのが驚きだ。
ドリアンのように美しくありたいと願い、また男色家であった原作者オスカー・ワイルドの願望もしっかり描いていると言えるだろう。

ドリアンが劇中で何度も衣装を変え、華麗なファッションを楽しませてくれるが、終盤、70年代らしいサイケデリックなファッションで時代の変換を表現している。
そんなファッションもハマるバーガーの美しさは本物で、画面の絵面はとても美しい。
しかし、正直なところ魔性の美青年としてのバーガーの存在感に頼りきった作品で、ヴィスコンティ作品の様な奥深い内容はないのが残念。

19世紀の物語を現代版としてリメイクするなら、狭い社交会のみならず、美貌のドリアンが浮名でマスコミを賑わせる時代の寵児となるように描いた方が、満たされないドリアンの孤独や、なぜ歳を取らないのか?を追及する者が現れるサスペンスが加わって面白かったかもしれない。

永遠に歳を取らないことは幸せか?
ヴァンパイア映画にも似た哀しみを感じさせたのは成功と言えるだろう。
note

note