はる

ドリアン・グレイ/美しき肖像のはるのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

「悪魔に魂を売った」という有り体な台詞が本当に起こった話が印象的。
肉体は時間と結びつく。彼の肉体の老いは肖像に留められ現実の体には反映されなかったが、見えないところで重なっていく老いは同時に(というよりも寧ろ、より正しくは)精神の老いである。「不可視世界が可視世界の見え方に作用する」とあったが、不可視世界=精神を貪っていくことで可視世界=肖像も落ちぶれていったということだろう。
作中、様々な文脈で「変わってしまった」「不変」といった言葉が散見されたことと、人間の内面の価値を否定し(美しい)肉体に固執するドリアンの姿が印象的だった。しかし人の内面の価値を認めないドリアンを「変えた」のは精神的なもの=考え方であったのは皮肉である。
また一方で肉体は正しく老いつつも精神は若いままであるため肉体の若さを求めるヘンリー。アンバランス、不変、堕落……人間が恐怖や孤独を感じるものが垣間見えた。最後にドリアンと肖像が元に戻ったのを見て安心したことにより、それまでずっと若いままの彼を不気味に感じていたことに気づいた。
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