このレビューはネタバレを含みます
ゲットーで女看守リザが女囚マルタに同情を向けるお話。アンジェイ・ムンクの未完の遺作をヴィトルト・レシェヴィッツが編集したものとのこと。
遺されたフィルム以外の箇所は、スチール写真とレシェヴィッツ本人によるナレーションという構成。それでも物語は十分に伝わる出来栄えでした。
看守と女囚という設定から、権力者たる看守の欺瞞的な人道性を暴き出すという装置の作り方の巧みさが素晴らしい。
リザはマルタを懐柔しえず、己の欺瞞にも気づかないまま。物語が続いていれば船上で見かけるというマルタとのやりとりの中で、決定的な変容が訪れるはずだったのかもしれません。
ムンクの映像もさることながら、それをムンクの意を損なうことなくまとめあげたレシェヴィッツの編集も巧みで、収容所という特殊な環境下で普遍的な人間の性向を暴かんとする名作でした。