紫のみなと

青春デンデケデケデケの紫のみなとのレビュー・感想・評価

青春デンデケデケデケ(1992年製作の映画)
4.2
ノスタルジアが専売特許の大林宣彦監督作が好みなのは我ながら承知の上とはいえ、本作は途中位から浮かんだ涙が消えたと思ったらまた浮かび、何故だか泣けて仕方がなかったです。

舞台は香川県観音寺市。私は四国に住んでいるのでちょっした理由で年に1〜2回は観音寺市に行く機会があるのですが、街並みは撮影当時も今も大きく変わってないように思います。主人公たちが通学のために渡る桃色の夕暮れの橋のシーンは美しすぎて、美しいというだけでまた涙が出る。観音寺市は尾道に負けてないですね!

青春期の5人の男の子たちもそれぞれに特筆すべき素晴らしさ。
主人公役の林泰文はまー全編通してお顔・表情が可愛くて可愛くて、初めて浅野忠信と知り合い、浅野の弾くギターを聴いている時の微笑みといったらもう、、、その浅野忠信の登場には出演していることも知らず驚きましたが、この時すでに(というよりこの頃の方がより、)凄烈な色気が漂っていて犯しがたい感じ。浅野忠信ファンの方は(言われなくても鑑賞済みだと思いますが)絶対に観た方がいいしもっと好きになるかと思います。
お寺の息子の合田君役の大林嘉之は早口に繰り出される老成したセリフ・友情&男気いっぱいのセリフ回しが達者過ぎてほんっとに最高。
当時にしても地味過ぎる岡下君、初めてドラムが届けられた日の少し離れた場所から岡下君の表情を追うカメラ、初めてドラムセットに座って発した声のボリューム感、これって演技?この場面は何?って思うリアルさ。
バンドメンバーを陰で支える谷口君のキャラクターもこんな子いなさそうで意外といそうな工学部系。最後まで支え方がブレてない。
登場人物は皆、方言で会話をするので何を言っているか分からない部分も多いけど分からなくても何の問題もない所がまた凄い。

生きるっていいもんだな、と思わされる。持って生まれた環境の中で生きていく市井の人々の頭上にあまねく降り注ぐ瀬戸内海のやさしい光に包まれた本当に愛しい作品です。