りょう

ブレイブ ワンのりょうのレビュー・感想・評価

ブレイブ ワン(2007年製作の映画)
3.8
 たぶん15年ぶりくらいで観ました。当時もジョディ・フォスターが演じたエリカの行動に賛否がありましたが、現代的な価値感でも難しい判断です。おそらく両極端になるであろう意見はどちらも正論のはずです。
 やっていることは殺人ですが、自身も口走っていたように、彼女にはその“権利がある”ように思えてしまうからです。演出も脚本もそんなミスリードに誘導していますが、あのエンディングは少しやり過ぎでした。
 当然ですが、これが正義なんかであるはずがなく、あくまでバッドエンドです。彼女はこれから苦悩の日々を過ごすことになります。婚約者を殺害されたこと以上の精神的なダメージが徐々に膨張してくるはずです。マーサ―刑事も職務を継続できないほどになるかもしれません。
 そこまで想像させることを意図した問題提起であって、この結末を表現することは“目的”ではなく“手段”であったと思います。犯罪被害者の支援やアメリカの銃社会の闇も含めて…。安易な復讐劇として完結させてしまっては、ジョディ・フォスターほどの俳優がこの役柄を演じたことを無駄にしてしまいます。
 ただ、ジョディ・フォスターがあまりにカッコよく、少し脆いところがありつつも、まるでダークヒーローのように映えてしまうのは微妙なところです。地下鉄の銃撃シーンなんかは勘違いしてしまいそうなほどにクールな描写です。エリカに共感できるようでなければ、この物語のテーマがぼやけてしまうし…、ニール・ジョーダン監督は、そうした難しいところを微妙な采配でうまく演出したと評価したいです。
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