ねこねここねこ

ブレイブ ワンのねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

ブレイブ ワン(2007年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

婚約者と犬の散歩中に暴漢に襲われて、面白半分に婚約者を殺された女性、エリカ(ジョディ・フォスター)自らも瀕死の重症で病院に運ばれて、目覚めたら婚約者の葬儀も終わっていた。

ラジオパーソナリティの彼女の番組のファンである刑事(テレンス・ハワード)は別の事件で病院に来て、たまたま彼女を見かける。絶望的と思われていたエリカは奇跡的に回復し、恐怖と闘いながらも仕事に復帰。身を守るために闇で購入した拳銃。

ある日コンビニで買い物していて遭遇した殺人事件の犯人から身を守るため発泡した弾が犯人に当たり犯人は死亡。それをきっかけにエリカは後戻り出来ない道へと入っていく。

悪人を次々と粛正して行くエリカ、刑事との間に友情めいたものも育ってゆく。
自分の知り合いが犯罪者の場合、きちんと逮捕できるのか?ずっと自分の中で疑問とも恐れともつかないものを抱えながらも、しっかり刑事であろうとする刑事。
一方でエリカの中の葛藤も…。

ある日とうとう婚約者を殺し、自分を半殺しにした犯人たちにたどり着いたエリカ。
最後の1人まで追い詰めたが逆に殺されそうになる。そこにやって来た刑事に救われ形勢逆転し、犯人に拳銃を突きつける。拳銃を離すよう説得する刑事。
その時のエリカの表情が素晴らしい。
拳銃を渡したエリカに刑事は自分の拳銃を手渡す。「撃つときは合法の銃で撃て」

面白半分に人を殺す奴らは自分が死にそうになると情けない声で助けを求める。
そんな人間でも法の下で裁かれる。犯した罪に不相応な軽い罰のことも多い。

面白半分で殺された人間は突然未来を奪われ、生き残ってしまった人間も何一つ補償されずに恐怖や不安、怒り、悲しみ、喪失感、あらゆる感情に向き合って進むか、自分の世界に閉じこもるしかない。
エリカは前者を選んだが、悲しみや喪失感、恐怖は拭えない。しかし偶然悪人を正当防衛に近い形で粛正したことで、何かが変わる。スッキリというわけでもなく、しかし後悔もない。法が守らないなら自分が守る、法が裁かないなら自分が裁く、そんな考えに至るのも無理もない。

しかし刑事が追っていた男を殺したのはあれはある種の友情なのか?
法ではなかなか対処できないような男。刑事はインタビューで違法な方法ならと言ったものの、カットして言い直す。
刑事の悔しさを察したエリカが、それならば自分が粛正しようとしたのだろうか?
しかしそれを刑事は喜ぶのだろうか?
この辺りは難しいところ。この時の電話で聞こえたエレベーターの音がきっかけの一つとなり、電車内にいた被害者の男の子の目撃談もあり、刑事はエリカを疑い始めるのだが。

最後の復讐はアリかナシか?
咄嗟に刑事の考えたシナリオが果たして通用するのか?というツッコミはさておき、普通は復讐をさせないで法に従うことを選ばせる。でもこの刑事は違った。復讐の共犯になることを選ぶ。
観ている者としては意外だけれどスッキリする展開だが、この後二人はどうなるのだろう?もう二度と会わないつもりなのだろうか?
その辺りもなんとなく気になる作品。

ジュディ・フォスターはともすればやや過剰な演技になりがちだけど、テレンス・ハワードの柔らかい演技でうまく中和されている印象。
俳優が上手いと作品に入り込むなと思う。
テレンス・ハワードはDVスキャンダルがなければもっとスクリーンに出た俳優さんなのに残念だけど、今後もどんどん活躍して欲しい。