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アラビアのロレンス/完全版のMyYouMeのレビュー・感想・評価

4.2
問答無用の不朽の名作。ただあまりにも長尺なためなかなか手が出しづらく、それなりパワーが必要な3時間47分。今回Netflixで観たのは完全版でいいのかな。
4時間弱ともなればさすがにインターミッションは必要。

広大なアラビアの砂漠を舞台に描かれる一大スペクタクル叙情詩。とにかく圧巻だった。
気が遠くなるような雄大な砂漠地帯、地平線、陽炎、灼熱の太陽、抜けるような青空。中東の自然が見せる過酷ながらも美しいロケーションに魅了され、膨大な数の人やラクダや馬が駆け巡るダイナミックさに度肝を抜かれる。まだCG技術などない時代、全てが手間暇かかった本物だからこそ何十年経っても失われないリアリティ。人がラクダに乗って移動する場面だけで延々と何分も費やしたり、構図やカメラワークの素晴らしさにこれぞ真に“大作映画”だなとしみじみ思わされた。

第一次大戦下にオスマン帝国からの独立を計るアラブ反乱軍を手助けしたイギリスの将校、T.E.ロレンス。当時の複雑な政治的思惑に翻弄され、アラブの文化や人々に溶け込みながらも徐々に自国との間で揺れ動き、やがて失意のままにアラブを後にするまでが描かれる。
中東の歴史・政治史には全く詳しくないのだけど、この頃の紛争が今日まで影響しているらしく、人間の憎悪の根の深さに虚しくなる。そして「またですか…」と言いたくなるイギリスのえげつなさがまあ酷い。

戦争映画ではあるけど、メインはやはりロレンスというひとりの人間の物語。彼とアラブ人の同盟関係を通じて人種や民族を超えた信頼を築き、共に闘い、しかし最後には大きな政局の渦には逆らえず体よく厄介払いされる。彼も単なる駒の一つに過ぎないという悲しい現実。
冒頭のセレモニーのシーンで問われる「T.E.ロレンスとは何者だったのか」
各人が口々に語った彼の人物像に一貫性がなかったことこそが、全てを物語っていたのだな。

何から何までスケールが大きく、正に一見の価値ありの超大作。出来るだけ高画質で且つ大きい画面で観ると感動もひとしおかと。
あとめっちゃラクダ天国。可愛くて可愛くてついつい目がラクダを追ってしまった。
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