ドS文筆家あんじゅ

アラビアのロレンス/完全版のドS文筆家あんじゅのレビュー・感想・評価

4.0
映画好きを標榜していながら恥ずかしながら初見でしたが、昨今の中東情勢のこととかもあって今見ておこうかなと思って観に行きました。古めの映画って見せ方の文法が今と違ったりして入り込めないことも多いし、退屈しちゃうかも?と思っていたが、インターミッション挟んでの4時間たっぷり楽しめた(近年インド映画を観るようになり長い映画に慣れてきたのもある)。

わたしは事前に当時の歴史を予習しておいたけど、歴史や政治のことを知らなくても楽しめる、いわゆる「一大スペクタクル」みたいな作品。映像だけが綺麗な映画は基本的に好きじゃないが、この作品で見られる砂漠の風景にはストーリーを脇に置いてでも見ておく価値があった。ドラマ部分ももちろん見応えがある。カリスマがありながら不完全な人間である主人公の魅力。暗喩に満ちた画作り。初見なのに「これがあの…」と認識できてしまう名シーンの数々。すごく大変だろうけど、わたしもラクダに乗って砂漠を駆け抜けたり、野営したりしてみたいなぁ。

悪名高きイギリスの3枚舌外交に代表されるあれこれが、何十年も経った今でも争いの火種になっている。映画とは決して一瞬のエンターテイメントではなく、歴史のひとかけらとしての意義を持ちうるのだ。 そのことを思い出させてくれたこの作品と、イスラエル VS パレスチナの問題が今ひとたび燃え上がっている今これを上映してくれた新文芸坐さんに敬意を。