HAYATO

アラビアのロレンス/完全版のHAYATOのレビュー・感想・評価

4.0
2024年136本目
第35回アカデミー賞で7部門を制した傑作
アラブ民族の独立に尽力した実在のイギリス陸軍将校・トーマス・エドワード・ロレンスの半生を描いた歴史スペクタクル
イギリス陸軍のロレンス少尉は、トルコからの独立を目指す反乱軍の指導者・ファイサルに会うため旅に出る。反乱軍の無力さを目の当たりにしたロレンスは、アラブ民族を率いてゲリラ戦を展開し、見事トルコ軍を打ち破ることに成功。その後も次々と勝利を収めていくが、ロレンスは次第にアラブ人同士の争いや国同士の政治的駆け引きに翻弄されるようになっていく。
イギリス映画界を牽引し、スティーヴン・スピルバーグやマーティン・スコセッシなど次世代の映画監督に多大な影響を与えたデヴィッド・リーンが監督。
ロレンス役は、当時主に舞台で活躍していたピーター・オトゥール。その他、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のアレック・ギネス、『道』のアンソニー・クイン、『ドクトル・ジバゴ』のオマー・シャリフ、『ベン・ハー』のジャック・ホーキンスらが出演。
オリジナル版の上映時間は207分。公開から4半世紀以上経過して作られた完全版の上映時間は227分。恐ろしく長尺のため3日間に渡って鑑賞。
高校時代に世界史の授業でT・E・ロレンスのことを知ってからいつか絶対に見ようと思っていた。
中々始まらなくてバグったかなと思っていたけど、オープニングと休憩とエンディングで黒画面に音楽が流れる演出は当時の大作映画では一般的であったらしい。
物語は、「主人公・ロレンスの交通事故死」というセンセーショナルな出来事で幕を開ける。バイクが徐々にスピードを上げ、やがて岩に突っ込む様は、複雑なアイデンティティを持つロレンスの栄光と挫折を描いたその後の展開を暗示しているかのよう。
最大の見どころはそのスケールの大きさ。超大規模なロケを敢行して撮影されたという広大な砂漠の景色は圧巻で、ドゥニ・ヴィルヌーヴが『DUNE/デューン 砂の惑星』を撮る上で最もインスピレーションを受けている作品として本作を挙げているのも納得できる。ティモシー・シャラメ扮するポールの衣装も本作からインスパイアされているそうだ。CGのない時代にこんなにも雄大でパワフルな画を作ったなんてとても信じられない。
モーリス・ジャールが作曲した音楽も、映画の世界観を引き立てる素晴らしいクオリティ。
本作においてロレンスは「アラブ諸国の独立に尽力した英雄」として映るが、その後イギリスが行った悪名高き「三枚舌外交」によって未だ解決の糸口が見えない状況が続く中東情勢に思いを馳せずにはいられなかった。
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