クマヒロ

アラビアのロレンス/完全版のクマヒロのレビュー・感想・評価

4.4
『砂漠の中の孤独』

ロレンスの人生における上昇と下降を描く。
1人の異常な人物の一生を素晴らしいスペクタクルと構成力で見せる、巨匠デヴィッド・リーンの作品。

二部構成の本作は一部がロレンスの上昇。
アカバ攻略を通じてロレンスがアラブ人からもイギリス人からも英雄視されるまでを描き出す。

一部で特筆すべきは「戦場にかける橋」より、さらに過酷な砂漠における圧倒的スペクタクル。大自然の美しさ、過酷さを壮大に表現し、アカバ攻略に至る道のりを盛り上げていた。
過度に音楽を使わない自然の特性を活かす演出。カットが切り替わる際の自然な工夫。前作から続く点のように表現される人。それが近づいてくる描写。
明らかに前作よりブラッシュアップされ、さらに物語のトーンにも非常にマッチしている。

一部はそこに至るまでのプロセスが非常に楽しく、ラストまで駆け抜けるような面白さがあるが二部は対照的。

二部で表現されるのは下降。
ロレンスは何者だったのかと深く掘り下げられていく。

自分が何者か掴めなくなり崩壊していく。プロセスが一部とは対照的で二部構成にした意味が伝わってくる。
YouTube「町山智浩の映画塾」にてこの辺りが的確に捉えられている。ロレンスが何者なのか、自分なりに考えた上で見ると意外な回答があり、面白い。

いずれにせよ、この映画が様々な作品に影響を与えていることは確かで、近作だと圧倒的スペクタクルに対し、孤独と闘う物語として「アド・アストラ」にも続いている系譜であると考える。

名作中の名作でスクリーンで映画を見る意味を感じる作品。
現代でもこれだけの予算が投じられた映像を見ることは少ないので、映画館で見られるタイミングで見るべきである。
クマヒロ

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