ミシンそば

情熱なき犯罪のミシンそばのレビュー・感想・評価

情熱なき犯罪(1934年製作の映画)
3.5
まず、30年代初頭の映画とは思えないほどに、とても奇抜でともすれば衝撃的とさえいえるような、オープニングを経て、クズ男の長い言い訳が始まる。

クロード・レインズ演じる悪名高き悪徳弁護士ジェントリーが、痴情の縺れから愛人を殺してしまうと言うのが話の大きな筋書きではあるのだが、少し舞台的な演出が目立ち、セリフや話の脱線もかなり多い。
だが、もともと舞台畑出身のレインズと、舞台劇のような映画と言うのは存外相性がいいと感じ、中弛み自体もない(短いランタイムの中でもキャラ立てはちゃんとしていた)。
ジェントリー、愛人を殺しておいてまず真っ先に考えるのが自己保身と次の愛人のこと、まさしくクズ男。
心の声を顕わす古き良きSFX演出も含めて、好演していた。

クズ男がちゃんと報いを受けるため、一先ず溜飲は下がる仕上がりで、尚且つわかりやすい。
そして奇の衒い自体が一周回って新しい、そんな映画だった。