ストレンジラヴ

サンセット大通りのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

サンセット大通り(1950年製作の映画)
4.1
「私は大物よ。映画の方が小さくなったの」

ハリウッドのサンセット大通りに面する大邸宅のプールから一体の死体が発見される。被害者はしがないB級脚本家で、背中と腹に銃弾を撃ち込まれていた。死体が発見される約6ヶ月前、金欠に喘いでいた脚本家ジョー(演:ウィリアム・ホールデン)は、借金取りに追われて逃げ込んだ屋敷で、サイレント時代の大女優ノーマ・デズモンド(演:グロリア・スワンソン)と出会う。ノーマは執事マックス(演:エーリヒ・フォン・シュトロハイム)と2人で暮らしていたが、自作の脚本によるスターへの返り咲きを狙っていた。住み込みでノーマの手伝いを始めるジョーだったが、次第にノーマはジョーの行動を束縛するようになる…。
解説からスタートし、物語の本筋に持っていく定石のビリー・ワイルダー節だが、なんと言っても本作のキモはノーマ・デズモンドだろう。自身もサイレント時代の大女優であり、長いこと表舞台から姿を消していたグロリア・スワンソンは本作によって見事にカムバックを果たした。屋敷というよりは忘れられたスターのための棺と言った方が相応しい大邸宅は、もう見るからに近寄らない方が吉である。サイレント時代の仲間(この中にバスター・キートンもいる)がごくたまにブリッジをやりにくる以外はほとんど業者の出入りしかなく、世間からは全く相手にされていないことにすらノーマは気付いていない。こうなったらもう何を言ってもムダで、執事マックスのように生涯をかけて尽くすか、或いはどうにかして縁切りするかのどちらかしかない。この手の作品を観るたびに、自分が裸の王様になってはいまいかと寒気がしてくる(そもそもスターではないけれど)。
スワンソンとシュトロハイム、ハリウッド・バビロン最後の生き証人が織りなす幻想を前に、皆さんはどこまで理性を保つことができるだろうか?ある意味半端なホラーよりよほど怖かった。