バタコ

ロルナの祈りのバタコのネタバレレビュー・内容・結末

ロルナの祈り(2008年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

監督の作品はこれで6作目。主人公の女性ロルナは、お金欲しさに闇の仕事をするタクシー運転手に言われるままに、ベルギーの国籍を取るためヘロイン中毒の男性クローディと偽装結婚する。しかも、そのあとロシア人とまた偽装結婚して大金を稼ぐために、この薬中の男性を殺す予定である。そこから物語は始まる。その後は予定調和的な展開はなく、その意味でまるでドキュメンタリーを観ているようだった。
監督らしい展開が二つあった。一つは、クローディがあっけなく殺されてしまう場面。芽生えた二人の愛情のある関係が描かれているので、ハリウッドなら薬物依存から立ち直り・・・という展開になりそうだが、そのあとあっけなく殺されてしまう。あっさりと、というかその場面(遺体の映像すら)はまったく描かれない。この先に希望が見える場面(買ったばかりの自転車に乗って立ち去るいつもと同じやさしげなクローディ。ロルナがそれを笑って追いかけて途中で見送る街角の場面)から、次の場面ではクローディが死んだあとの話になっている。二つ目は、そのあとロルナが妊娠に気づき、、という展開で、実は妊娠していなくてでも本人は妊娠していると思い込んで、お腹の子どもを守るために逃走というラストに続く場面。ハリウッドなら妊娠して子どもを出産して愛した人の子どもを育てる展開になりそう。この作品では妊娠さえしていないことがあとでわかる。そこまでしても、ロレナはクローディとつながっていたかったいという気持ちの表れなのか、罪悪感と良心の呵責で精神的におかしくなっているのか、自分にはわからなかった。
頭のなかが混乱し、事態の重さだけがのしかかってくる。すべてしんどい。監督に、試されてるみたいだ。
あと、ロレナが、ファビアが「薬中」というたびに、「クローディ」と言い直させる場面や、恋人が出稼ぎに行くのがそこが原子力発電所であるところだと、さりげない場面が監督の人や社会へのこだわりを感じる。
監督は、映画が観客を愛するかと問いながら映画をつくっているという。次元が違う特別な監督。新作が楽しみ
バタコ

バタコ