クシーくん

おたまじゃくしが母さんを探すのクシーくんのレビュー・感想・評価

4.0
上海美術製作所お得意、水墨動画(水墨アニメ)の一番再初期の作品らしい。他の水墨画物の傑作は「牧笛」(1963)、「鹿鈴」(1982)「山水精」(1988)などがあるようだが、1960年に製作された本作の時点で既にその基本型は十二分に完成されていると言えるのではないか。日本ではまだ鉄腕アトムすら放映されていない時代と考えると凄まじい先進性。

卵を産んだカエルの母親が出かけている間に卵が孵化してしまい、母親とはぐれたオタマジャクシ達が母を探すという、タイトルそのまま通りのお話で、道中出会う色々な動物に話を聞いていく事で、母親の特徴を次第に掴んでいく筋運びになっている。テナガエビの細かすぎる造形とヒヨコが可愛すぎて好き。

多種多様な生物が出てくる中でいずれもカートゥーンキャラクターのように、人間じみた表情をさせない点が良い。カエルの口角が僅かに上がり下がりする程度で、水墨画で描かれた生物はあくまで動物らしい動作を描いたまま、ナレーションで心情を補完している。ナレーションの喋り方や簡単な語彙からあくまで子供向けに作っているのだろうが、決して子供向けだからといって妥協しないプロフェッショナルな姿勢が強く伝わる。
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