つのつの

ヒア&ゼア・こことよそのつのつののレビュー・感想・評価

ヒア&ゼア・こことよそ(1976年製作の映画)
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1970年初頭のパレスチナ情勢ということで身構えて見たけど、意外と腑に落ちる。
勿論耳馴染みのない固有名詞も多く出てきてそれは勉強するしかないのだが、ゴダールが「ここ=フランス」と「よそ=パレスチナ」という二項を立てた上で提起する問題意識は今でも共有可能だと思う。
52分間丁寧な論証が展開されるので退屈はしない。
「ここ」と「よそ」が存在する。→「ここ」と「よそ」を接続する。→そのために映画は何ができるのか。→そもそも「よそ」を映画で撮ることに欺瞞はないのか?→結論:「ここにいるよそ」=他人の話を聞く。
未完の構想を相対化する過程で、ゴダールはかなり精緻に論点整理を行っていて、特に後半の3つの問いは印象的。
フランスの中流家庭という「ここ」に映画はどうやって「よそ」を接続するのかに対するフィルム=映像を入れ替えるという発想は、「平和」なTLにガザ地区の投稿を共有することに繋がると思うし、ドキュメンタリーという名目で都合の悪い細部に目を瞑る映像作家は結局ファシズムに親和することへの批判も鋭い。何より最後のナレーション。
ここに留まる人たちが、あまりにも単純なよその映像や瞬間を見ることができなかったのは何故なのかを端的に言い当てる結末。
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